浴衣を着る若者を見た俳優の古田新太さんは、同世代にも和服のよさをアピールするがその真意とは……。

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 花火大会の季節である。浴衣姿のギャル達が町中を闊歩(かっぽ)する。

 最近は色んな浴衣があって、レースを施している物やミニスカの物まであって、おじさん達の目尻を下げさせる。この間なんかシースルーよ。紫色のシースルーの浴衣の中に柄物のビキニをつけている訳だが、ビックリだよ。いくら日本が平和だからって、その格好はいかんだろ。気をつけなさい。

 対する男子の方だが、こちらは何ともなぁって感じである。大体、細すぎるのだ。だから似合わない。まあ浴衣なんだから、だらしなく着てもいいのだが、あまりにもズルズルなのだ。ズボンは腰ばきするくせに、帯をウエストに締めるのは何故だ。下げろ! 帯をもっと下げろ! 細いから腹まで上がってくるのだが、その度に下げろ。帯が上がっちまってるもんだから、襟が後ろに下がっちまう。あんな腹の上に帯を締める奴は、おいらの知ってる限りではバカボンくらいだ。バカボンは腹が出ているからかわいいが、ガリガリだから流し雛(びな)にしか見えない。流し雛は、格好良くないしかわいくもない。でも、和服である浴衣を若い人達が着るのは、大変喜ばしい。

 おいらは着物が大好きだ。ま、職業柄、時代劇なんかもあるし、着る機会も多い。腹も出ているし、帯も上がってこない(自慢)。

 そこでどうだろう、同世代諸君、和服のススメである。休日は、ポロシャツとチノパンを脱ぎ捨て、浴衣を着てみないか。和服は、我らビール腹の味方である。江戸時代は、腹が出ていれば出ているほど二枚目だったのである。いわゆる「恰幅(かっぷく)がいい」という奴だ。浴衣を着て、アウトレットにショッピングに出かけよう。ホームセンターに行って、シャベルを買おうじゃないか。ゴルフクラブを選ぼうよ。下にステテコ、シャツを着れば、少々乱れてもかまわない。

 最近は、かわいいステテコも一杯売っている。おいらが知り合いから貰ったステテコは、くまモンだ、だーっ、かわいい、見た目も涼しげ。小粋な扇子を持って、カンカン帽でもかぶればモボな旦那である。いつも子供達にポコポコペチペチ叩かれるビール腹も「お父さん、格好いーい」である。「でも帯を締めるのが難しいし、面倒だよ」というあなた、角帯なんか締めなくてよろしい。絞りかなんかの柔らかい帯を一本買っておけばいいんです!(川平慈英風)。グルグル巻いて蝶々結びでOK、簡単なんです。普段着なんだから安いので十分。いっそ、彼女、奥様にも着せてみようじゃありませんか。二人して下駄を鳴らして、よーし、今年は久しぶりに花火大会に行ってみますか。珍しく髪をアップにしたパートナーのうなじが、うっすら汗ばんでいたりして「汗かいちゃったから、ちょっと帰りシャワーでも浴びて行こうよ」とか言ってラブホ入っちゃったりして。脱いだはいいけど、私、着付けできないよー、なんて言うもんだから、ラブホのおばちゃんに着付けに来てもらったりして、ちょっとバツが悪いもんだから2千円ばかりチップを払おうとしたら「着付けはサービスに付いています」とか言われて、二人で目を合わせたりして。よ〜し、今度は喪服でやってみようとかね。

 古田の和服のススメでした。

週刊朝日 2013年9月6日号