失速著しい日本維新の会。“発祥の地”である大阪(改選数4)だけは別世界と思いきや、そうでもないようだ。大阪府知事でもある維新の松井一郎幹事長(49)が掲げる目標は「トップ当選」。昨年の衆院選で維新が府内で獲得した比例票は146万票で自民党は85万票。楽勝とも思えたが、現実は甘くなかったようだ。
「公示後にうちが実施した調査で、ついに維新を逆転しました。昨年の衆院選はまだうちにアゲンストの風が吹いていたけど、状況は一変しましたね」(自民党府連幹部)
維新の公認候補、東徹氏(46)を追いかけると、厳しさがよくわかる。7月9日、堺市内数カ所で行われた街頭演説。聴衆はどこもわずか数十人。危機感を抱いた選対本部はその日夜、府議、大阪市議らに一斉にメールを送信した。「候補者の街頭演説に人を集めてくれという『動員メール』でした」(府議)。
ところがその翌日、大阪市福島区の野田阪神駅前で行われた東氏の街頭演説では、立ち止まるのは信号待ちの人だけ。あるベテラン府議はこうため息をつく。「“風”で府議や市議になった新人ばかりで、組織がないから動員をかけたくてもかけられないんですよ」。
だが空振りは動員作戦だけではない。8日夕には府議と大阪市議を総動員し、大阪市内の主要駅の出口に配置。ビラ配りを行ったが、「衆院選のときは、向こうから取りに来る人や『頑張ってくれよー』と言ってくれる人もいたんやけど、今回はおらんかった。受け取る人も3、4割減ったかな」(市議)。
維新にとって参院選は、9月の堺市長選と、来年秋の実施をめざす、「大阪都構想」の是非を問う住民投票の前哨戦となる。東氏本人を直撃した。「この逆風の中、トップ当選なんて松井さんもムチャ言うわ(笑い)。だけど、うちらは『大阪から日本を変える』とスローガンを掲げている。トップ当選でなかったら、そんなことできないですから。手応え? あまりないです……」。
ひそかに関係者の注目を集めているのが、23年越しの因縁だ。1990年の衆院選に東氏の父親、武氏が出馬した。そのとき敗れた相手が、今回の自民党の候補者、柳本卓治元衆院議員(68)なのだ。さらに、「武氏の街宣車の運転手が松井さんだった。まさに遺恨試合」(選対本部関係者)。復讐パワーで終盤での巻き返しなるか。
※週刊朝日 2013年7月26日号