江戸時代、「天下の台所」と呼ばれた大阪(大坂)を支えたのは河川だった。大阪湾から京都に続く淀川は、船を使って人と物を運ぶ経済都市・大阪の大動脈だった。
その淀川の支流である大川からさらに分岐した堂島川と土佐堀川の中州部が「中之島」だ。東西約3キロのこの小さな地区には、各藩で生産された食料品などを貯蔵する蔵屋敷が集まり、「天下の台所」の物流拠点を形成していた。
時は流れて2012年。ビジネス街となった中之島に「中之島フェスティバルタワー」が誕生した。高さ200メートルの建物からは、かつての大阪を支えた水路と、現在の街並みが一望できる。
注目を集めているのは高さだけではない。2~7階に併設された「フェスティバルホール」は、1958年開館の旧ホールが生まれ変わったものだ。その音響の素晴らしさから「音楽の殿堂」と称されていた伝統を引き継ぎ、建設時には10分の1の模型を造り、音の再現に徹底的にこだわったという。
ホールは13年4月に開館予定。大阪から新たな文化が生まれる。
※週刊朝日 2012年12月28日号