16日に行われた衆議院選挙は、自民党と公明党が合わせて325議席を獲得し、民主党は57議席と惨敗した。ジャーナリストの田原総一朗氏は「これは民主党が第三極に没落したことを意味している」と指摘する。

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 2009年の総選挙では、自民党は大敗したとはいえ119議席を獲得し、その前の05年総選挙では民主党が113議席を獲得した。

 つまり、第2党ならば敗れても110議席超は獲得できるのが二大政党制なのだが、今回の民主党はその半分程度しかとれなかった。それは、維新の会やみんなの党などの第三極が、自民党ではなく民主党の票を食ったからだ。結果として、「第二極」は事実上、消滅してしまった。

 こんな結果になった最大の理由は、民主党が政権を運営することにあまりにも慣れておらず、次々にボロが出たことだろう。民主党は、自民党にノーを突きつけることはできたが、政権をどう運営していくのか、そのノウハウをまったく知らなかった。ブレーンも、自民党政権を批判するだけで、民主党に政権運営を指南できる人材はいなかった。これは、いうなれば労働組合がいきなり経営陣になったようなものだ。

 ただ、民主党政権で原発事故が起きたことはよかったと思っている。これがもし自民党政権で起きていれば、自民党は全力で事故の内容を隠蔽(いんぺい)しただろう。民主党は隠し方を知らなかったから、原発事故はほぼすべてが露呈した。民主党政権でなければ、いまも事故の詳細は闇の中だったかもしれない。

 今回の選挙結果には、いまの日本の閉塞した状況に国民が不安を覚え、自信を失っていることが出ていると思う。投開票の前に新聞各紙が「自公で300議席」などと予測を書いた。こうした報道が出ると、普通は自公にマイナスに働くものなのだが、今回はむしろさらに勢いが出た形になった。これは、将来の展望に不安を覚える国民が、勝ち馬に乗りたがった結果だと捉えている。

週刊朝日 2012年12月28日号