12月4日、衆議院選挙が公示された。だが、国民の関心は一向に高まっていない。ジャーナリストの田原総一朗氏は、「ほとんどの政党が実現性に乏しい世論迎合の主張を氾濫させているからだ」と指摘する。
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政党はみな「原発ゼロ」を実現するまでの速さを競っている。だが、どの党の幹部に聞いても、「原発ゼロ」にできる具体的な根拠はまるでない。それどころか、原発とはそもそもどういったものかということをほとんど知らず、口先だけで「原発ゼロ」を訴えているのが実情だ。
私は各党の幹部に「民主党は2030年代に原発ゼロを目指し、40年たった原発は原則廃炉にするという『革新的エネルギー・環境戦略』を閣議決定すると豪語していたのに、なぜ挫折したのか」と問うた。しかし、あきれたことに誰もまともに答えることができなかった。そのことに関心さえ持っていなかったのだ。
挫折した原因の一つは、アメリカが使用済み核燃料の管理問題などに強い懸念を示したことだった。基本的には、使用済み核燃料は青森県六ケ所村の再処理工場に保管してもらうよう頼むしかない。だが、30年代に原発をゼロにするなどと閣議決定すれば、青森県は使用済み核燃料の保管を引き受けなくなる。それどころか、現在六ケ所村に保管されている使用済み核燃料を、各原発に引き取れと要求してくるだろう。
だから、民主党は「原発ゼロ」の閣議決定をやめて、しかも「使用済み核燃料の再処理は続行する」という何とも矛盾した方針にしなければならなかったのである。
「原発ゼロ」にするまでの速さを競っている政党は、この難問を一体どのように考えているのか。使用済み核燃料の最終処理はどうするのか。全く見当をつけていないだろう。
※週刊朝日 2012年12月21日号