車いすバスケは、障害の度合いによって1.0~4.5点の8クラスに分け、試合に出場する5人の選手が合計14点以内にならなければならない。問題となっているのは、障害の程度が軽い4.0と4.5の選手で、IPCは、委員会が規定する「出場資格のある障害」に入らない選手が含まれていると問題視している。

 だが、新しいクラス分けの基準を定めるのは容易ではない。IWBFは東京大会に向けて新基準の策定準備を進めているが、新しいクラス分けの妥当性については、最終的に試合を実施して確認する作業が不可欠だ。スポーツ大会自粛要請解除の見通しが立たないなかで、日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)の関係者は「情勢を見守るしかない」と戸惑いを隠せない。

 パラ選手には、健康面のリスクもある。日本障がい者スポーツ協会の医学委員長で、日本パラリンピック委員会(JPC)でも運営委員を務める陶山哲夫医師(東京保健医療専門職大学長)は、こう話す。

「パラ選手には、頸髄損傷や脳性まひなどの重度障害で呼吸器の機能が弱い人がいます。肺炎になると重症化しやすく、命に重大な危険が及ぶことがある。肺に感染すると重症化しやすい新型コロナウイルスは、オリンピック選手以上に高いリスクがあります」

 重度障害の選手は、車いすラグビーや脳性まひなど重度障害者のために考案されたボッチャに多いという。また、オリンピック選手に比べてパラ選手の平均年齢は10歳ほど高く、糖尿病や高血圧など生活習慣病を抱えている人も多い。車いすで生活している選手は、腕部はトレーニングできても、腹部や下半身を鍛えることが難しい選手もいるためだ。

「発展途上国の中には医療チームが組織されていないことも多く、持病の確認が難しい場合もある。日本の医療チームとしては、暑さ対策でも大変なのに、そこにウイルス対策が重なると、医師や看護師が不足する可能性もあります」(陶山医師)

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日本で封じ込めに成功しても残る課題