ソフトバンクは2014年もリーグ優勝を果たしていたもののチーム本塁打数は5位。20本を超えた選手は一人もいなかった。それが2015年には松田宣浩(35本)、柳田悠岐(34本)、李大浩(31本)の三人が30本塁打をクリアするなど一気に数字を伸ばしている。被本塁打は悪化したものの、防御率、失点が改善しているというのは特筆すべき点だろう。そして、より劇的な変化を見せたのが昨年のロッテだ。本塁打数は前年から一気に80本増加。チーム打率はほぼ変わらないのに得点は100点以上増やしたのだ。ちなみにロッテのチーム本塁打数が100本を超えたのは2010年以来のことである。更に投手陣も踏ん張りを見せて被本塁打の増加はわずか14本に抑え、防御率、失点ともに改善している。この数字だけ見ると、同じように長打力不足に悩んでいる中日が導入を検討するというのも無理はないということになりそうだ。
しかし当然だが、外野を狭くしただけで勝てるほど簡単な話ではない。まずソフトバンクはホームランテラス導入前年の2014年に李大浩、ロッテはホームランラグーン導入の昨年レアードとホームラン量産が期待できる選手をしっかり補強しているのだ。現に李大浩がメジャーに移籍した2016年のソフトバンクはホームラン数がリーグ3位の114本まで減少している。中日も長打で勝とうとするのであれば、ホームラン打者の補強は必要不可欠になってくるだろう。
もうひとつは投手陣がしっかり機能する必要があるというところだ。そして、2015年のソフトバンク、2019年のロッテの投手コーチを務めているのが吉井理人という点も注目したい。吉井は引退直後の2008年から2012年までは日本ハムの投手コーチを務めていたが、自身も就任当初はコーチとしての知識がなかったと語っており、2014年からは大学院でコーチングを学び、2015年には引き続き大学院に在籍しながら現場に復帰している。その理論は現在の日本球界の中でもトップクラスと言われており、両チームの投手陣の踏ん張りに繋がったことは間違いないだろう。現に吉井が去った後の2016年のソフトバンクはリーグワーストの被本塁打数を記録しており、チームもリーグ3連覇を逃す原因となっている。