藤波辰爾の蹴りを捕らえ、逆ドラゴンスクリューからサソリ固めの態勢に持ち込む長州力 (c)朝日新聞社
藤波辰爾の蹴りを捕らえ、逆ドラゴンスクリューからサソリ固めの態勢に持ち込む長州力 (c)朝日新聞社
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 五輪イヤーで盛り上がる2020年だが、プロレス界も勢い良く動き出した。年越しから聖地・後楽園ホールでは連日興行。そして隣接する東京ドームでは新日本プロレスが恒例のビッグマッチを1月4、5日の2デイズ開催した。

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 今年の新日本・東京ドーム大会もさまざまな話題を提供してくれた。王座移動などもあり新時代を予感させると同時に、歴史の重さを感じさせた。なかでも長年使われてきた基本的である渋めな関節技が脚光を浴びた感がある。

 WWEのスターだったクリス・ジェリコが棚橋弘至を破った『ウォール・オブ・ジェリコ』もそうだ。引退する獣神サンダー・ライガーが使い会場が沸いた『吊り天井固め (ロメロ・スペシャル)』や『弓矢固め(ボー・アンド・アロー・バックブリーカー)』など。これらは長年にわたって若手選手も大事にしてきたもので、基本に沿った、いわゆる「反らせ系技」(便宜上命名)だ。

 ジェリコが使用する『ウォール・オブ・ジェリコ』は、国内では、『逆エビ固め(ボストンクラブ)』として有名。古くは力道山時代から使われていた伝統的な技で、ジャンボ鶴田や藤波辰爾にも好んで使用してきた。新日本・ヤングライオンや全日本若手の前座試合でたびたび決め技としても使われた。ジェリコは若手時代に日本マットを主戦場にしていたこともあり、基本とも言える『逆エビ固め』を重視しているようにも思える。

『逆エビ固め』はうつ伏せ選手の両足を脇に挟み、腰を落とし、そして反らす。一見すると単純にも見える技だが、受ける側は体幹などの強さとともに、辛くても折れない強靭な心が必要で、まさにレスラーに欠かせない技。片足のみ(片逆エビ固め)や、太ももを抱え込む形など、派生型も数多い。

『逆エビ固め』で印象的だったのはスタン・ハンセン。剛腕で相手をなぎ倒す『ウエスタン・ラリアット』が代名詞だが、AWA世界ヘビー級王座を初戴冠した時には『逆エビ固め』が決め技となった(85年12月29日 vsリック・マーテル戦)。

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関節技にもさまざまな歴史が…