「この働き方で評価されるのは、正直に言って難しいと思う」

 こう割り切っているが、職場はチームで動くことが多い。仕事を切り上げて帰ると、仕事仲間に負担を掛けているのではないか。そんな後ろめたさも感じる。

「どうして定時に退勤するという選択肢が当たり前の社会じゃないんだろう。まだまだ、労働時間の長さで評価される習慣は根深くあると思います」

 仕事以外の時間でも、一人で過ごせる時間はほとんどない。資格試験の勉強や読書もしたいが、ままならない。仕事と育児に全力を注いでいることで、疲れがたまっている。「自由な時間が欲しい」と切実に思うことが少なくない。

 あと3年は長女の保育園の送り迎えが続く。この期間は定時で退勤する日が続くと思うと、なかなか2人目の子どもを持つことには踏み切れない。

■仕事の制限は「宿命」 38歳会社員男性

 東京都中央区の会社に勤める男性(38)は、会社員の妻(33)と長女(4)、次女(1)と4人で都内に暮らしている。保育園の送り迎えなど育児には積極的に関わっている。そのため仕事を制限せざるを得ない自分の立場について、「宿命ですね」と言う。

 9年前に中途採用でいまの会社に就職した。新卒で入った多くの社員に引けを取らないよう、「必死こいて、なんとか頑張ろうと思っていました」と振り返る。新規事業が立ち上がれば手を挙げ、出張が続くような忙しい部署への異動もすぐに受け入れた。

 残業は多く、帰宅してから仕事をすることも珍しくない生活スタイルを続けていた。入社して5年後に長女が誕生したが、そのスタイルは変えなかった。家事や育児はほとんど妻に任せていた。

 そして、妻が体調を崩した。

「このままじゃだめだ」と思って保育園の近くに引っ越し、送り迎えや家事を分担するようになった。育児に関わって「こんなに大変なことを一人でするのは無理だ」と感じた。自然と自分のできることを探すようになった。

 お迎えのときは午後6時に会社を飛び出し、ほかの日もなるべく午後7時には会社を出てまっすぐに帰宅する毎日。仕事が忙しくなりすぎないように、コントロールしている。同僚たちとの飲み会は控え、「効率重視」という理由で、社内で同僚たちと立ち話をすることも避けている。

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面白そうな仕事にも踏み込めず…