『仮面ライダーフォーゼ』も、最終コーナーにさしかかりました。
シナリオは、僕と三条陸さん、長谷川圭一さんの三人で書いていましたが、実はこの三人が三人ともスケジュールを守るタイプ。
シナリオ打ち合わせのあと、原稿の〆切日を決めて、その翌日辺りに次のシナリオ打ち合わせを設定するのですが、これが遅れたことがない。
編集者をしていた経験で言えば、漫画家しかりライターしかり、そう誰もが〆切を守るわけではない。普通、〆切を守る人でも、たまには調子が悪くて書けなかったり、ほかの仕事の兼ね合いだったりで、遅れることはある。
実際、これまでの『戦隊』や『仮面ライダー』の現場でも、脚本家の仕事が遅れて、打ち合わせ日がずれることはあったらしい。
ところが、『フォーゼ』に関して言えば、シナリオの遅れにより、打ち合わせ日が変更されたことはなかったのです。
僕は、自分が書くエピソードの時にしか打ち合わせに参加しませんが、他のスタッフの方は全話参加するので、彼らから話をきいたのですが。
しかし、これはプレッシャーでもあります。
ここまで誰も遅らせてないのなら、自分が最初に遅れるのはいやだという気持ちになり、なおのこと必死で〆切を守るわけです。
誰が最初に〆切をやぶるか、逆向きのチキンレースのような気分になる。
三人が同時進行でシナリオを書いている時期があったのですが、僕がシナリオを書いていると、メーリングリストで、三条さんの次のシナリオが送られてくる。しばらくしたらやはりメーリングリストで長谷川さんの次のプロットが上がってくる。
みんな粛々と自分の仕事をこなしているのが、リアルタイムでわかってしまう。
ダラダラやってる自分としては「こりゃいかん」と焦ることになる。
ここで俺が遅れると、フォーゼシナリオ〆切破り第一号のレッテルが張られることになる。これはみっともない。遅れるわけにはいかないと、萎える気力を振り絞りながら、何とか予定通りに原稿を上げる。
血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ。
いや、仕事を順当にこなしているだけなのだから、「血を吐きながら」でもなければ「悲しい」わけでもないんですけどね。こんな例えに使ったら、モロボシ・ダンにも若槻文三さんにも怒られる。 でも、一番大変なのは、僕と三条さん長谷川さん、三本のシナリオをチェックするプロデューサーの塚田さんだったんでしょうけどね。
先日、『フォーゼ』の夏映画の打ち上げで、久しぶりに三条さんや長谷川さんとお会いしました。 二人とも『フォーゼ』の仕事は終えられてるので、もうリラックスムード。
長谷川さんに至っては「最終回は、先にシナリオも読みません。一視聴者としてテレビのオンエアを見て楽しみます」と、完全に離脱している。
うらやましいことです。
でもせっかくここまで〆切を守ってきたので、最終回まで心が折れることなく、体調を壊すことなく、走りきるしかありませんね。