が、武田を見る限り、そういう気配はない。むしろ、フェミ男時代よりも柔らかく穏やかになった印象がある。その理由を考えるうち、こんな発言を見つけた。

「ぼくのお袋、片耳聞こえなくて、一方に頼って生きているから、人の話がよく聞こえなかったりする。それで人の言葉を正確に理解しようと首をかしげている。聞き返すときにもより近く、人との距離をちぢめるようにして会話してくる。それが魅力的だしすごくいいんですね」(モルゲン編集部「青春のころ PART2」より)

 いちばん身近にハンディを背負った人がいて、その関係性を通して培った優しさ。それが彼を謙虚なマッチョにしているのではないか。

 11月25日放送の「人生イロイロ超会議」では、滝沢カレンに「すぐ脱ぐ人がイヤ。シュワルツェネッガーさんは演技のときだけ脱ぐ」とつっこまれ、

「シュワルツェネッガーさんの規模で言われたら、そりゃもう、おかしなタイミングで脱いでますよ」

 と、笑って返していた武田。葛藤を経て手に入れたそのしなやかな心と体がある限り、筋肉ブレイクはまだまだ続きそうだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。

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