

個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、ファッションについて。
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本当にお恥ずかしい話なんですが、僕、どうしても、「服」に興味が持てないんです。これ、もうほとんど、僕のコンプレックスになっています。
妻には「人前に立つ職業なんだから、そういうことにもっと気を配りなさい」と言われてます。その通りだと思います。
ただ現実は、普段着る服は全部、妻がネット通販で買った服を着ています。ちょっと気が緩むとすぐジャージになります。以前、映画の舞台挨拶にジャージで行こうとして、妻に「気を確かに持て」と雪山で遭難した登山者のように言われ、思いとどまったこともあります。
服屋さんに行くと、「服屋さん」という表現が、もう既に、かなりアレな自覚はありますが、とにかく服屋さんに行くと、なんか緊張します。すぐ帰りたくなり、妻に「ちゃんと自分で選びなさい」と怒られます。
以前、現場にジーンズで行ったら、みんなによってたかって驚かれたことがあります。「うわ~珍しい!」、「二朗さん、ジャージ以外も着るんですね」、「二朗さんがジーンズとか、なんかイメージが違う~」。一体どんなイメージで俺を見てるんだという気もしますが、それくらい普段はジャージだったんでしょうね僕。「今日は比較的フォーマルな席だから、ジーンズで行こう」と言ったら、「ジーンズは完全にカジュアルだ。気を確かに持て」と妻に怒られたこともあります。僕は何回気を確かに持てばいいんでしょう。ちなみに、ジーンズの僕に、某福田雄一監督は、「二朗さ~ん、洗練されたね~」と言いました。ジーンズで洗練されたと言われる僕の日頃のファッションレベルの低さをどうかご推察ください。ドン小西さんには間違いなく殴られるでしょう。
僕のファッショナブルへの道を完全に諦めた妻は、「とにかく人を不快にさせない程度の清潔感があるものを着なさい」と言います。なのでそこだけは留意しています。でも、なんというか、自分の色といいますか、自分らしさといいますか、そういうのを表現できる服を、さりげなく着こなす人に、どうしようもない憧れと劣等感があったりします。