大型で非常に強い台風19号が、東日本に接近している。中心気圧は925ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は50メートルで、12日午後に本州に上陸の恐れがある。このままの勢力で上陸すれば、千葉県で大規模停電を起こした先月の台風15号をはるかに上回る被害が予想され、専門家は「過去に経験のない事態。早めの避難を」と呼びかけている。
巨大台風が直撃すれば、関東で広範囲な浸水が起こる可能性がある。東京都が2018年3月に発表した浸水想定区域図では、東京23区の3分の1の面積にあたる約212平方キロメートルが浸水。被害は17区におよび、区域内の人口(昼間)は395万人にのぼる。浸水の深さは最大約10メートルで、3階にいても危険な水量だ。堤防の決壊や高潮などがおきることで、江戸川区、墨田区、葛飾区、江東区などで1週間以上浸水が続く地域もあるという。オフィス街などにも浸水域は広がり、都市機能が大規模なマヒを起こす。
浸水の想定は、1934年に死者・行方不明者約3000人を出した室戸台風(910ヘクトパスカル)と同等の規模の台風が、東京湾を襲った場合を想定している。室戸台風に比べれば台風19号の勢力は少し弱いが、大潮の時期と満潮の時間が重なる可能性もある。東京都の防災担当者は「このまま勢いが衰えずに直撃すれば、最悪の想定に近い規模の台風が上陸する」と警戒を強めている。
気象庁は、台風19号を1958年の狩野川台風に匹敵する記録的な大雨が降る可能性があると発表している。『首都水没』の著書があるリバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏は、こう話す。
「狩野川台風は静岡県の伊豆半島に流れる狩野川流域に大きな被害を出し、1269人の死者・行方不明者を出しました。東京でも大雨の影響で広範囲に浸水し、葛飾区、江東区、江戸川区などの下町低地のほか、世田谷区や中野区でも浸水被害がありました。今回の台風19号は過去に経験のないもので、まさに“未曾有(みぞう)”の災害が起こる可能性があります」