「サザエさん通り」(福岡市早良区 )のキャラクターシルエット像 (c)朝日新聞社
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 マスオさんの声が替わって、1カ月がすぎた。国民的アニメ「サザエさん」のことだ。

 8月25日の放送から「フグ田マスオ」の声を担当している田中秀幸は、歴代3代目。この日の2本目には、公園のベンチに腰掛け「はい、タラちゃん」と水を勧めつつ、自分はちゃっかりビールを飲もうとする場面があった。その声は、先代の増岡弘がハスキーで抜けた感じなのに対し、すっきりとしたイケメンボイス。違和感は否めない。

 実際、家事をしながらこの場面を「聴いて」いた妻は「一瞬、不審者が話しかけたのかと思った」と、苦笑していた。それくらい、先代の声が耳に馴染んでいたわけで、ネットにも「完全に新キャラ」などの書き込みが見られた。

 とはいえ、飲もうとした昼酒をタラちゃんにたしなめられ、気弱そうに驚く「えぇ~!?」については、声質に関係なく「完璧だった」という反応も。今後は田中ならではのマスオさんが、しだいに定着していくのだろう。

 ただ、先代の増岡は40年以上もマスオさんだった。苗字もあいまって「増岡マスオ」として親しまれ、2001年には『マスオさんのみそづくり指南』という本も出版している。じつはこの人、本格的な味噌作りをしていて「僕が総理大臣だったら、みそは自給自足以外認めません」と語るほどなのだ。このたび、マスオさんとともに「それいけ!アンパンマン」のジャムおじさんも卒業したが、私生活では「みそおじさん」というわけである。

 ちなみに、卒業の理由は83歳という年齢。今もナレーションを務める「有吉くんの正直さんぽ」もこの夏は2カ月近く休みをとった。味噌作りには、風邪から声を守る目的もあるというが、さすがに寄る年波には勝てないようだ。

■病気や高齢、死亡を機に交代

 というわけで、マスオさんの交代劇は「サザエさん」の抱える高齢化問題を改めて浮き彫りにした。半世紀も続いているのだからやむをえないとはいえ、何十年も出演した声優が病気や高齢、死亡を機に交代することが珍しくない。

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