動画を残す危険性は、こだまさんが予想している通りです。将来、二人の仲がこじれて、リベンジ・ポルノとして使われるという危険性だけではなく、彼のスマホやパソコンに残る動画が、予想もつかないソフトやきっかけによって、どんな形で流出するかは、誰にも分からないのです。

 大きな声で言えない性癖を持っていることは、悪いことでも珍しいことでもありません。

 ただ、それが社会的に問題だったり、愛する人が嫌がったりする場合は、なんらかの代償行動によって、その欲求を解消するのが人間の知恵です。

 例えば、他人の家のお風呂を覗きたいという強烈な性癖があって、そのまま実行したら犯罪者になる場合、盗撮ドキュメントと銘打たれたアダルトビデオを見るとか、覗きがテーマのアダルトコミックを読むという行動で、自分の性癖となんとか折り合いをつけて生きていくのです。

 こだまさんの彼は、今までの彼女のように、こだまさんも自分の性癖をやがては受け入れてくれると思っているから、要求を言い続けているのだと思います。

 どうしても、動画を撮りたいのなら、別れるとはっきり言うべきでしょう。

 私のことを大切に思っているのなら、二人の動画を撮る代わりの代償行動を考え、それで折り合いをつけて欲しいと言って下さい。

 その時の彼の反応によって、こだまさんのことをどれぐらい愛してくれているのか、こだまさんの立場にどれぐらい立ってくれるのかが分かると思います。

 彼の態度や言葉に傷つくかもしれません。でも、だらだらと長く苦しむよりも、ちゃんと結論を出すことは、はるかに前向きなことだと思います。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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