少子高齢化、沿線人口の減少、学校の統廃合、道路インフラ整備によるマイカー社会……。いずれも、日本のローカル線が抱える悩みの種である。特に第三セクターの鉄道は、国鉄(およびJR)が「将来の収益を見込めない」と判断した路線なので、当然ながら利用者の減少がはっきりと現れている。
【独立したロングシートを採用。食堂車にもなる「川風号」の車内】
これを食い止める方法は「沿線外から客を呼び込んで利用してもらう」ことに尽きる。そこで、NPO法人や行政と組んだビジネス戦略で「長良川ブランド」を打ち出し、流域の観光エリア化に貢献してきた長良川鉄道(本社・岐阜県関市)の坂本桂二専務にお話を伺った。
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■沿線外の利用者を増やす観光列車
沿線外の利用者を増やすアイデアとして、全国各地に登場しているのが観光列車である。しかし、「ただ造ればよい」というわけではない。投資額に見合った収益を考えなければならないし、その前には予算や、一般車両の数とのバランスも考えなければならない。そして、持続可能な効果をもたらすためには明確なコンセプトやターゲットが欠かせない。
例えばJR東日本では「のってたのしい列車」として、古民家風車両の「おいこっと」や利き酒列車「越乃Shu*Kura」などを投入し、列車ごとに独自性の高いブランディングに成功している。
また、JR九州ではD&S(デザイン&ストーリー)列車というカテゴリーで「ゆふいんの森」のような斬新なデザインの車両をオンリーワンで造り上げたり、「指宿のたまて箱」のような「煙をイメージさせるミスト」の仕掛けに代表されるストーリーを設けたりして成功を果たしている。こういった列車はいずれも「乗ることを目的として遠方からでも行きたい」という気持ちにさせ、多くの乗客でにぎわっている。
■観光列車「ながら」への道
長良川鉄道では、観光に主眼を置いた列車を2010年代初頭から走らせていた。その名も「ゆら~り眺めて清流列車」。ちょっと失礼な言い方かもしれないが、車窓の美しさという「沿線の自然」だけを売りにしてビュースポットで徐行する列車で、一般型車両での運転だった(現在も継続中)。
とはいえ、この列車は結構な人気を得ていて週末を中心に満席になることも少なくないそうだ。特別な料金が必要ない列車として仕立てて、それなりに成功している。しかし、筆者自身も乗車して感じたことだが「いい景色だった」という感想しか残らないのが実情だった。