しこりが大きく温存術の対象にならない場合でも、手術の前に抗がん剤を投与してしこりを縮小させる「術前化学療法」で、温存が可能になることもある。

 なお乳房温存術では、術後に残した乳腺の局所再発を予防するための放射線照射が必要だ。

 一方「乳房切除術」は、がんが乳房の広範囲に広がっている場合やしこりが大きい、あるいはしこりが多発している場合などに、がんができた側の乳房を乳腺ごと取り除く。現在は、大胸筋と小胸筋を残し、乳房全体を切除する「胸筋温存乳房切除術」が一般的で、術後、手が上がりにくくなるなど不具合を生じることはほとんどなくなった。また全摘と同時、あるいはしばらく経ってから、自分の組織や人工物を使って乳房を再建することも可能だ。再建には健康保険が適用される。

 乳房温存術が可能でも「再発が心配」と迷う人も多いだろう。術後20年間の局所再発率は、乳房温存術(+術後放射線)で14%、乳房切除術では2%以下だ。ただし人それぞれ再発リスクは異なるので、病状を正確に把握することが大切だ。

■センチネルリンパ節生検で無駄な郭清を回避

 また乳房温存術をしても、もともと乳房が小さい人や切除する部位や範囲によっては乳房の形が崩れ、美容面から全摘して再建したほうがいいケースもある。自分の希望を医師に伝えたうえで、十分に話し合って選択してほしい。

 乳がんはわきの下のリンパ節に転移しやすい。手術では転移があるリンパ節も切除(郭清)する必要があるが、術前の画像検査では転移の有無が正確にはわからない。

 かつてはリンパ節を広めに取っていたが、腕がむくむ、しびれるといった不具合が起きることがあった。近年は術中にがんが最初にたどり着くリンパ節をまず調べる「センチネル(見張り)リンパ節生検」が導入されている。ここに転移がなければその先のリンパ節の郭清を省略できる。

(文・谷わこ)

※週刊朝日ムック「よくわかる!がん最新治療シリーズ(1)乳がんと診断されました」から抜粋

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