先週の話になりますが、無事に『薔薇とサムライ』が大千秋楽を迎えました。
稽古開始の1/20からだと四ヶ月間の長きに亘ってひとつの芝居を作って来たカンパニーも、これで解散です。
とにかく無事に、最後までたどりついたことに乾杯です。
総動員数9万人。
『五右衛門ロック』での10万人動員以降も『蜉蝣峠』『蛮幽鬼』と、コンスタントに9万人くらいのお客さんが観に来てくれているらしいです。
この不景気に本当にありがたいことです。
9万人と言えば、ざっと9億円以上のお金が動くということです。へたな邦画の制作費なら軽く越えている。
そんな大規模な公演を、自分達だけで打っているのです。
例えばメインの役者が一人不慮の事故にあって公演中止になったら、チケットの払い戻しなど大変なことになってしまう。
ライブである以上、そのリスクを飲み込んだ上で、上演しています。
今回も、無事に終われて本当によかったと、演劇の神様に感謝です。
いつも名残は惜しいのですが、今回は特に「ああ、もうアンヌと会えないんだなあ」という、登場人物との別れを惜しむ気持ちが強かった気がします。
最近の脚本はドラマ性をより強く志向しているのですが、今回の『薔薇とサムライ』は、近年になく物語の深みよりもキャラクターの強さと見終わったあとの爽快感を意識して書いたので、キャラが際立った上に気持ちのいい連中と別れるのが、寂しかったのかもしれません。
キャスト一人一人のことをあげるときりがありません。
マンガチックなデフォルメされたキャラクターなのですが、それを役者の皆さんが血の通った人間にしてくれた。
一人一人が舞台の上に立つことを、心から楽しんでいる舞台になった。僕にはそう感じられました。
作者冥利に尽きるというものです。
30周年にふさわしい、お祭り騒ぎになったのではないでしょうか。
さて、劇団☆新感線としては、秋公演『鋼鉄番長』の準備に入るのですが、これは座長であるいのうえひでのりの作・演出作品。
僕の新作舞台は、外部公演になります。
もうスポーツ新聞などで発表になりましたが、堀北真希さん主演、白井晃さん演出の『ジャンヌ・ダルク』。
今年はヨーロッパ尽くしになりますね。
実はこの仕事、『薔薇とサムライ』を書き終わった今年の初めにオファーが来ました。
なんちゃってヨーロッパとはいえ、新感線で初めてヨーロッパを舞台にした作品を書いたあとだったので、これも何かの縁かなと、受けることにしました。
そう言えば、二年ほど前に、ジャンヌが火あぶりにあったルーアンの町で誕生日を迎えたりしましたしね。って全然関係ないか。
スポーツ新聞に「台本はまだ執筆中だが」などと書かれてもいた通り、今は粛々と台本書きの毎日です。
新感線に比べれば、はるかに真面目な作品になるでしょうが、これも新しいチャレンジです。