■“プロ子役”感がない素朴さ
ブレイクのきっかけは8歳のとき、スタジオジブリから完成目前の主題歌を試しに歌ってみるように言われたことだ。彼女が呼ばれたのは偶然だったようだが、宮崎駿はその歌や雰囲気を「無垢なるもの」としていたく気に入り、少女とおじさんふたりという3人組ユニットを着想した。ピアノの伴奏だけで歌われたそのときのバージョンは「のぞみちゃんデモ」として主題歌CDに収められている。音程もリズムもかなり覚束ないが「アルプスの少女ハイジ」以来、少女の素朴さをこよなく愛する巨匠の萌えツボにハマったのである。
その素朴さは多くの日本人にも支持され、主題歌も彼女も大きな人気を得た。逆にもしこれがもっと芸達者な子役だったら、これほどのことにはならなかったかもしれない。というのも、彼女の引退を惜しむなかにはこんな声もあるからだ。
「大橋のぞみちゃん今何してるかなあ プロ子役感がないところが好きだった」(一般人のツイッターより)
ここでいう「プロ子役」とはかつての安達祐実や少し前の芦田愛菜、そして現在の寺田心のように、大人みたいなプロっぽさで仕事をこなす子役ということだ。ともすれば年齢詐称説まで飛び出すほどで、芦田など「じつは60歳説」がCMのネタにも使われていた。
一方、大橋のぞみは年齢相応の子供っぽさが魅力だった。その違いについて、振付師の濱田Peco美和子が「週刊女性」のインタビューで興味深い指摘をしている。「崖の上のポニョ」と「マル・マル・モリ・モリ!」の振り付けをした経験から、
「愛菜ちゃんは物事に対しての集中力がすごいです」
と「マルモリ」のとき6歳だった芦田の集中力を絶賛。かたや「ポニョ」のとき8歳だった大橋については、
「純真無垢な感じで、本当かわいかった。意外と恥ずかしがりやさんでもあるんです」
と振り返った。プロ子役っぽさよりも、年齢相応の魅力を感じたということだろう。その「恥ずかしがりやさん」ぶりについては、本人も9歳のとき、こんな話をしていた。