また、将来については「あの年頃の子供は、毎日気持ちがコロコロ変わるものでしょう。まだ分かりませんよ。とにかく何でもやりたがる子でね」という見方を示していた。現在、大学に行っているかどうかもさだかではないが、なんとなく、芸能人ではない職業を選びそうな気がする。
ただ、彼女はありきたりな復帰をしないほうが、気になる存在であり続けるのではないか。そういえば、大橋が歌った「ノンちゃん雲に乗る」の物語世界は今から64年前に映画化され、ヒロインの母親を原節子が演じた。かつて小津安二郎の映画で一世を風靡したあと、43歳で引退して「永遠の処女」と呼ばれた女優だ。あるいは、原が美しいイメージのままファンの記憶のなかで生きたように、大橋のぞみも可愛いイメージのまま、ファンの心をとらえていくのだろうか。
つまり、不在によって存在感が保たれる人生。最強子役のその後としては、それも素晴らしいことだ。その生き方が貫かれたとき、大人の役者に成長するのとも、途中で転落するのとも違う、新たな伝説が誕生する。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。