しかし、テレビでは、安倍総理のそうした言動を批判するのはタブーとされ、キャスターやコメンテーターが口々に、「安倍総理がテロと戦っている時に安倍批判をするのは、テロリストを利することになる」と言って、安倍批判を封印した。

 そこで、私は、1月23日の「報道ステーション」で、日本人は安倍総理とは違うという意味で、「I am not ABE」というメッセージを世界に発信するべきだと発言したのだ。番組後の反省会では、古舘伊知郎キャスターからいいコメントをもらったという評価があったそうだ。
しかし、結局その後、後藤さんは、湯川遥菜さんに続き、殺害されてしまった。

■パニックに陥った官邸がしでかしたとんでもない圧力行動

 その一連の出来事は、安倍官邸に衝撃を与えたようだ。そもそも、ISが安倍総理の中東歴訪中にビデオメッセージを流すということを想定していなかったのだろう。捕虜返還のために交渉している最中に、敵方を刺激するような行為は慎むのが鉄則だ。それを無視した総理の中東訪問に対しては、下手をすれば、国民の強い反感を呼ぶ可能性がある。時は、15年の通常国会直前。これから集団的自衛権の行使容認の安保法制についての議論が始まるところであった。タイミングがあまりにも悪すぎる。そこで、マスコミに圧力をかけて政府批判を封印した、……つもりだった。

 ところが静かになったと安心しかかったところで、私の爆弾発言である。官邸はパニックに陥り、とんでもない行動に出た。番組のオンエア中に二人の菅義偉官房長官秘書官がテレ朝の編集長とプロデューサーに別々に圧力メールを送ったのだ。私の発言に対する抗議である。番組中だから、電話が通じない、しかし、何が何でも急いで抗議をしなければならない。そこでメールということになったのだろう。

 その後、菅官房長官はオフレコのテレビ局記者との懇談で、私を非難する発言を行うなど、圧力をかけ続けたようだ。私にもその取材メモが複数社から回ってきた。その結果、私は、3月末を最後に報ステに出演ができないことになったのだ。全く同じ時期に、同番組の屋台骨であるプロデューサーも更迭。気骨ある辛口コメントで知られたレギュラーコメンテーターも降板となったが、これも局上層部の指示によるものだったそうだ。

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「I am not ABE」の紙フリップは安倍政権の圧力への抗議