そうしてたどり着いたのが14年4月24日に行われた「中国第28期天元戦挑戦手合三番勝負」の第2局だった。17歳で史上最年少の九段昇段を果たした中国の陳耀燁棋士(白番)と「AlphaGo」との勝負で話題になった柯潔九段(黒番)の対局という極めてハイレベルなものだ。

「中国のタイトル戦なので、持ち時間は一人3時間くらいです。この盤面を見る限りでは終盤に差し掛かっているので、5、6時間は経っているのではないでしょうか。でも、持ち時間などが関係ない波平さんだと2時間くらいの盤面だと思います。『波平さん最強か』って囲碁ファンはみんな盛り上がっていましたよ」(大橋六段)

 町の囲碁教室で世界レベルの戦いが繰り広げられているという衝撃の事実が判明。他のシーン描写についても熱弁する。

「波平さんが本を読みながら囲碁を打つシーンもすごく忠実です。表紙から推測される内容と盤面に並ぶ石の形が合っている。定石の勉強をしている雰囲気が出ていて、とにかくすごい。画像も小さいのに、よく作り込まれています。碁盤に白と黒の石を描くのは面倒な作業だと思いますし、石の数が少ない形を選んでもいいのに、あれを選んで忠実に再現されている。サザエさんは盤面の画像を適当に使いまわしているわけではないんだ、と本当に感動しました。囲碁にめちゃくちゃ詳しい人がいるのか、たまたま当たっただけなのかどっちなのかな……」(大橋六段)

■サザエさんで繰り広げられる“熱戦”の真実

 SNSで繰り広げられる碁盤考察を制作サイドはどう感じているのか。サザエさんの映像制作を手がける「エイケン」担当者を直撃した。まず、碁盤についての一連のツイートを伝えると、「そ、そんなにですか」と、驚きながらもこう答えた。

「シーンを描くときは作画の描き手がその都度テレビやネット、本の情報を参考にしながら独自に調べています」

 膨大な数の対局を手がけるため、どのシーンでどの資料を使ったかどうかを特定することは難しいというが、番組の放送時期、試合の日付、そして何より盤面からも作画担当者が同対局を参考にした可能性はじゅうぶん高い。

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友蔵の使う碁盤は偽物?