これらのグラフと表から何が見て取れるか。
17年まで4%以上実質賃金が下がっていて、18年もマイナスの可能性が高い。19年はどうかと言えば、10月に2%消費税率を上げれば、物価が普通の年よりも上がるので、19年も実質賃金は下がるか、上がっても微増だろう。だとすると、21年までの安倍総理の任期中に、4%の減少分を取り返すには20年以降、驚異的な賃金の伸びが必要で、12年の民主党政権時代の実質賃金に戻すことはほぼ不可能だという見通しが出て来る。
これだけでも、アベノミクスをさらに続けるという安倍総理に対して、政策変更を迫る格好の根拠になるはずだ。
■「統計国会」で喜んでいる反安倍勢力も経済音痴?
毎勤統計不正が出たおかげで、国会は、野党の思惑通り「統計国会」になってきた。
厚労省の統計不正に加え、その後の同省の「特別監察委員会」による調査をめぐる「不正」と言われてもしかたのないお粗末な対応、そして、統計の総元締である総務省による基幹統計「小売物価統計」の不正まで出て、誰も信じられない状況だ。この問題は終わりが見えない底なし沼と化した感がある。
「底なし沼不正」だから、批判の材料には事欠かない。これからも延々と国会での追及が続くであろう。マスコミでもこの関連の記事があふれている。しかし、これらの議論を見ていて感じるのは、大事な視点が欠けているのではないかということだ。
前述したとおり、実質賃金が安倍政権の5年で4%も減少したことを、厚労省は18年2月には、ちゃんと発表していた。積極的に宣伝はしなかったが、そのことを隠していた訳ではない。どんなに愚かで経済音痴の記者であっても、厚労省の発表した資料を見れば、「実質賃金は、安倍政権で大幅なマイナス」ということに気づくはずだ。それにもかかわらず、そのことをしっかりと国民に伝えた新聞はなかった。
本来なら、暦年の数字が出る毎年2月には、どうして安倍政権になってからマイナスが多いのかなどについて専門家の見方や今後の見通しなどについても特集を組んで報じるべきだった。そうすれば、多くの国民は、安倍総理に「アベノミクスで賃金が上がった」などと言われても、騙されることはなかっただろう。株価については詳報しても、賃金については上がった時だけ瞬間情報を大きく取り上げるだけだったマスコミは、株価頼みの安倍政権の注文通りの報道を行っていたと言ってよい。