一方の野手で一軍、レギュラーに最も近そうなのは山野辺翔(西武3位)だ。桐蔭学園では3年夏まで二桁の背番号を背負い主に9番を打つような選手だったが、桜美林大では下級生の頃からレギュラーとして活躍。4年時には中軸を任され、秋の明治神宮大会準優勝にも大きく貢献した。三菱自動車岡崎でも1年目からセカンドのレギュラーとなり、昨年の都市対抗ではトヨタ自動車の補強選手として出場。層の厚いチームでもセカンドを任され、初戦では決勝のタイムリーを放つ活躍を見せた。小柄だが抜群のスピードと安定した守備に加えてパンチ力のある打撃も持ち味。浅村栄斗の抜けたセカンドの穴を埋める存在としてはうってつけの選手であり、同じセカンドの名手だった辻監督からの期待も大きい。

 野手でもう一人注目度が高いのが辰己涼介(楽天1位)だ。大学生にしては細身だが運動能力の高さは折り紙つき。外野から見せる強肩、一塁までを悠々と4.0秒未満で駆け抜ける俊足はプロでも上位に入る。苦労しそうなのはバッティング。関西学生リーグ歴代2位の通算122安打を放っているが、タイミングをとる動きが少し大きくヘッドが遅れ気味に出てくるのが難点。プロレベルのボールに対応するまでには時間がかかる可能性がある。ただそれでも守備と足は一級品でパンチ力もあるため、チャンスは多く与えられそうだ。

 下位指名ながら一軍の戦力になりそうなのが松田進(ロッテ7位)だ。大学時代までは体は大きいもののひ弱な印象が強かったが、社会人の2年間で見違えるようにバッティングが力強くなった。ショート、サードの守備に安定感があり、大型だが脚力も兼ね備えている。内野手のライバルは少なくないが、右打者が不足しているチーム事情も松田にとって追い風になりそうだ。

 こう見ると全体的にセ・リーグよりも即戦力候補が多い印象だ。彼らによるハイレベルな新人王争いが展開されることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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