■NHK、バラエティーも変革迫られ“民放化“

 月曜日から土曜日まで毎日オンエアが半年間続く朝ドラでは、ヒロインが連日出ずっぱりのため、収録は朝から深夜まで及ぶことも想像に難くない。しかも、「スカーレット」は大阪放送局制作のため、その大半が関西圏での収録となる可能性が高い。朝ドラ収録にかかりっきりになることはすでに明らかで、戸田恵梨香クラスの女優がやるには割が合わない気がしないでもないが……。

「『朝ドラ出演中は新規のCMを入れてはならない』というNHKならではの“暗黙のルール”もあるようですし、広瀬すずや戸田恵梨香クラスの女優が半年以上もスケジュールとCM契約を制約されてしまうのは、事務所としてはダメージが大きい。ですが、朝ドラのヒロインをやると、女優としての株は絶対にあがります。朝ドラは海外でもオンエアされていますし、まさに、日本を代表する国民的女優になれるチャンス。そうなれば、朝ドラ直後から、より大きな映画や民放ドラマの主演、そしてCMオファーが殺到します。一時的に損失を出しても、お釣りがくるぐらいのリターンがあると思いますよ。30歳の戸田からすると、朝ドラヒロイン出身ではないまま、キャリアを重ねてきたのに、ここにきて“チャンス”が舞い込んできた。朝ドラで成功すれば、息の長いキャリアを築いていけるでしょう。その一方で、短期的に見ると『朝ドラから新人女優が生まれる機会がひとつ減った』とも言えるわけで、日本の芸能界としては損失と言えるのかもしれません」(前出の業界関係者)
 
 TVウオッチャーの中村裕一氏は、「今のNHKは常に変化球が求められている。そのため、朝ドラといえども、改革するしかなかったのでは」と分析する。

「ドラマではありませんが、『ボーっと生きてんじゃねーよ!』で今年の流行語大賞トップ10入りした同局のクイズバラエティー『チコちゃんに叱られる!』のプロデューサーは、フジテレビの黄金期を代表するコント番組『笑う犬』シリーズや『ダウンタウンのごっつええ感じ』を支えた共同テレビの小松純也氏です。また、民放色の強かった、くりぃむしちゅー・有田哲平さんの冠番組『有田P おもてなす』を今年4月にスタートさせ、来年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』では、映画『モテキ』『バクマン。』などの大根仁監督を演出として迎えるなど、かなり大胆で革新的な番組づくりに乗り出し、かつ成功を収めています」

 NHKが積極的に“民放出身者”を取り入れている点を指摘したうえで、こう続ける。

「この流れは、ウッチャンナンチャンの内村光良さんを座長に迎えて2013年にスタートした『LIFE!~人生に捧げるコント~』にまでさかのぼると言えるでしょう。今年の紅白歌合戦の総合司会も2年連続で内村さんですし、もはやNHKと民放のハイブリッド化は明らか。これらの観点から見れば、朝ドラで『新人オーディションでヒロインを決める』のは今更感がありすぎる。戸田さんのヒロイン起用は、今のNHKのレールにのった改革だと言えるでしょう」

 「テレビ離れ」が叫ばれて久しい昨今。その風穴を開け、視聴者を再びお茶の間に取り戻せるのは、意外にも「いま最も革新的なNHK」なのかもしれない。(ライター・藤原三星)

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