年金は大丈夫だろうか?
これは高齢者だけでなく、今や、若者にも共通の懸念だ。多くの人々が、老後のことが心配だから、ひたすら働き、ひたすら貯蓄に励む。銀行預金にほとんど金利が付かなくなってから久しく、貯金は少しも増えない。株を買えと政府は勧めるが、そもそもそんな余裕がないし、そんな言葉を信じてよいのかもわからない。八方塞がりの庶民は、ますます将来が不安になって、財布のひもを固く締める。消費は伸びず、円安の恩恵を受けた大企業や一部の富裕層だけが「好景気」と「不動産バブル」の恩恵を享受するといういびつな経済状況には変化の兆しが見えない。
政治状況を見ても、「格差拡大」を批判する野党は頼りなく、安倍一強には陰りが見えると報道されるが、その割に内閣支持率はかなり高いままだ。他に有効な選択肢がないからなのだろうが、今の政権の経済政策の恩恵を享受できない庶民にとって、それは当分希望がないというのと同義だ。
そんな不安な状況が続いても、政府はいつもいい加減な経済予測を作って、「年金は大丈夫」と言い続けている。最後に行われた2014年の「財政検証」でも、「100年安心」の標語は変わらなかった。厚生年金保険料率は若干の引き上げを行うが、18.3%を上限として固定し、年金受給開始年齢を65歳に引き上げることにより、現役世代の平均的な所得に比べて現在の6割程度よりは下がるが、概ね5割以上の年金を支給するというものである。そして、これが実現できれば、まずまずだと考えられてきた。そして、今年は2018年だから、最後の検証から4年しか経っていない。
しかし、安倍政権は、ついに、年金破たんに備えた具体的な準備に着手した。もちろん、「このままでは破たんです」とは口が裂けても言わない。来年の統一地方選と参議院選挙が終わるまでは、とにかく有権者に余計な心配をさせないように、「明るい未来が待っている」かのような装いで、長寿化社会の負の側面を徹底的に隠しながら、年金改革の下準備を始める作戦なのだろう。そして、参議院選が終わったら、驚きの「年金大改革」に乗り出すことになるのは確実な情勢だ。