「説明に納得せず、虚偽だと考える人が多いのに、支持率は30%を切らず、一時的に落ちても回復する。政権の強弁を信じる人も、ウソだと思っても許す人もいるということでしょう」(前川さん)

 名古屋大学大学院准教授の日比嘉高さんは、次々と生み出される政治のウソが及ぼす影響をこう語る。

「米メディアでは、トランプ政権のふるまいを分析する中で、『ガスライティング』という言葉が使われています。映画『ガス燈』に由来する言葉で、繰り返しウソをつき騙すなどして、知覚や記憶を否定することにより、対象の正気を失わせ操作できるようにすることを指します」

 ワシントン・ポストやブルー ムバーグ・ビューでは、下記のようにも分析された。組織では、 上司にウソを強要されることにより、部下は上司への依存度を深める。ウソはある種の踏み絵で、判断能力の放棄であり、支配者への依存の始まりである。

「ハンナ・アーレントは『全体主義の起原』(1951年)で、独裁的権力がプロパガンダにおいてどうウソを利用するか、なぜ大衆が支持するかを分析し、ウソを信じることも、シニカルにやり過ごすことも、全体主義指導者のプロパガンダを成功さ せたと指摘しました。つまり、虚偽を信じることも、放置することも、全体主義を後押ししてしまうのです」(日比さん)

 前川さんも、現政権の先行きを危惧している。

「政権はプロパガンダがうまい。仮想敵を作り、国民を操作できると考えている節があります。 対抗するためには学ぶほかありません。政策が本当に自分たちのためなのか、気づいてほしい。税制は、1%の金持ちを優遇するためのものではないか。自分たちの権利が不当に扱われていないかを知るべきです」

  今国会での成立を目指す働き方改革関連法案は、労働規制を緩和する「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」が最大の焦点。長時間労働の是正が前面に出される一方、高プロは使用者に対する労働時間規制をはずすものだ。裁量労働制のデータ 偽造を指摘してきた法政大学教授の上西充子さんは言う。

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