※イメージ写真
※イメージ写真
JT会員サイト
JT会員サイト

 2015年、HONDAがF1に復帰する。F1といえば、オールドファンならば、たばこメーカーと切っても切れない関係にあったことをご存じだろう。ロスマンズやJPS、キャメルといった名だたるたばこメーカーがスポンサーとなり、多額の広告費を投じていた。

 その背景には、欧米では1980年代から「テレビなどでのたばこのプロモーションの制限」があったからだ。世界中に中継されるF1は、数少ない広告の場だった。だが、それもいまでは失われてしまっている。日本のJT(日本たばこ産業)は、長年、テレビCMや新聞や雑誌の広告などを展開してきたが、昨今の風潮もあり、テレビなどでの広告は制限されている。

 実際、たばこの販売数は減少し続けている。1998年には年間3500億本弱だった販売本数は、2013年に2000億本を下まわった。その背景には、分煙化の浸透、公共の場での喫煙の制限のほかに、たばこ税の値上がりもある。1986年にはたばこ1本当たり2円だったたばこ税は、1989年に1本当たり約6円、その後段階的に値上がりを続け、2014年には1本あたり12円を超えている。税率が上がったおかげで販売本数は激減しているのに、売り上げはほとんど変わっていないのだ。

 つまり、値上がりしているが、その値上がり分のほとんどは税金であり、JTの増収にはつながっていないということになる。販売本数が減っただけ、苦労するわけだ。こうなるとJTが取るべき道は2つ。事業を下支えをする別の商品を開発するか、たばこの利益率を上げるかだ。残念ながら前者については、飲料製品の製造・販売事業からの撤退が発表されてしまった。後者の、マーケティングで言うところの「顧客の囲いこみ」や「ヘビーユーザーの取りこみ」をするほか手段はないということになる。

 既存顧客の囲いこみとして一般的な手法は「会員制度」の導入だ。もちろん、JTも会員制度を導入している。だが、その事実は意外に知られていない。たばこのCMを大々的に展開できないのと同様に、会員サイトの存在も積極的にアピールできないのだ。

 しかも、入会の手続きが面倒だ。まず、住所や氏名、電話番号、年齢は仕方がないが、“写真入りの身分証明書(生年月日がわかるもの)”の画像データを送信しなければならない。未成年に会員になられては困るので致し方ないのだが、非常に面倒だ。そして、その承認まで1~数日の時間がかかる。「じゃあ、もういいや」と思う人も多いと思われる。同じように写真と身分証明書が必要だった「Taspo」は、それがないと自動販売機でたばこが買えないという不便が伴ったものの、普及はしている。だが、JTの会員サイトは入会しなくても不便はないといえる。

 そして、苦労の末に入会してみると肩すかしを食らわされる。プレゼントキャンペーンの情報や新商品の情報、既存たばこのブランドサイトへのリンク程度しかコンテンツがないのだ。

 他にも、「Peace」「Sevenstar」といったJTのたばこのブランドサイトもJTの会員しか閲覧できないようになっている。テレビが駄目ならネットでプロモーションをという望みも絶たれている。苦労して会員になっても、キャンペーン情報くらいしかメリットがないのでは、会員になろうという人も少ないと思われる。

 複数の愛煙家に話を聞いても、「知らない」「やっぱりあるんだ(興味はないけど)」という人がほとんどだったJTの会員サイト。法律と社会の風潮の影響は大きいとはいえ、もう少しなんとかならないのか?と考えさせられてしまう。