安倍首相の中東訪問中止に批判噴出「逃げるなら自衛隊派遣も見直せ」 米イラン衝突で混迷する日本外交

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仕事始めのあいさつで「新たな外交の地平を切り開いていきたい」...

 政府は8日、イランがイラク国内の米軍駐留基地をミサイル攻撃したことを受け、今月中旬に予定していた安倍晋三首相の中東歴訪を見送る方針を固めた。安倍首相は11日に出発し、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、オマーンの3カ国を歴訪するとされていた。日程は7日の自民党役員会で安倍首相自ら発表したが、わずか1日で決定が覆ったことになる。

 中東歴訪の中止は、米国とイランの間で緊張が高まっていることが影響したのは間違いない。一方、安倍政権は昨年12月27日、中東海域に自衛隊を派遣することを閣議決定している。1月中に河野太郎防衛相が派遣命令を出し、1月中にP3C哨戒機、2月から海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」を派遣する予定だ。

 自衛隊の最高指揮官である安倍首相が中東行きを中止したとなると、自衛隊の中東派遣計画も白紙になるかと思いきや、そのつもりはないようだ。菅義偉官房長官は8日の記者会見で「現時点では変更はなく、現地の状況を見極めつつ準備に万全を期していく」との見解を示している。

 これに対して、ネット上で批判が噴出している。ツイッターでは、

「いざ危険になると、自分だけは真っ先に逃げるとは…」

「逃げるのだけは相変わらず早いな」

「自分が逃げるなら自衛隊派遣もまず見直せ」

「安全圏にいる権力者たちが若者を死地に送る戦争の本質があらわれている」

 など、安倍政権を批判するコメントが相次いでいる。

 イランと友好関係にある日本は、歴代政権は中東問題に対して中立的な立場を維持してきた。だが、イランのザリフ外相は8日にツイッターを更新し、「私たちは事態のエスカレートや戦争を求めてはいないが、いかなる侵略に対しても自分たちを守るつもりだ」と投稿。イラク革命防衛隊も、米軍駐留基地への攻撃後に「アメリカのテロ軍に基地を提供したすべてのアメリカの同盟国に警告する」と表明している。

 ジャーナリストの高野孟氏は言う。

「そもそも中東海域への自衛隊派遣は、米国が呼びかけた有志連合への参加を日本が断ることはできないので、『調査・研究』という立場で“やっているフリ”をするものでした。最初から問題があるのに、米国とイランの衝突でリスクが高まったのだから中止するのが当然です。自衛隊員には『ケガをせずに帰ってきてね』というつもりなのでしょうが、不真面目極まりない」


 自衛隊が派遣されるエリアは、今回訪問する予定だった3カ国に近いオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾だ。日本関係の船舶が襲撃された場合などには、武器使用が可能になる「海上警備行動」の発令が想定されている。

 ただ、イランを刺激する可能性があるため、同国に近いホルムズ海峡は事前に派遣先から外されている。にもかかわらず、安倍首相は中東歴訪をとりやめた。そのため「政府はイラン以外の地域も危険だと考えているのでは」との疑念が高まっている。前出の高野氏は言う。

「先月20日に来日したイランのロウハニ大統領に対し、安倍首相は自衛隊派遣について説明し、理解を得たつもりでいます。ロウハニ大統領にしてみれば『日本は米国に何も言えないよね』ということはわかっている。本来であれば中立的な立場を使って、米国とイランの両国に“話ができる国”として日本が事態の収拾に努力すべきですが、トランプ米大統領寄りの安倍首相に、中東の国々も期待していない。外交的成果が期待できないから歴訪も取りやめたのでしょう」

 安倍首相は2019年を振り返って「日本が世界の真ん中で輝いた年になったのではないか」と語っている。年が明けて7日の自民党の仕事始めのあいさつでも、「今年は戦後外交の総決算に挑戦し、新たな外交の地平を切り開いていきたい」と、不安定化する国際政治に積極的に関与していく意欲を示した。今こそ、「外交の安倍」の実力を世界に見せる時ではないか。(AERA dot.取材班)

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