チュート徳井の申告漏れ カンニング竹山「想定のかなり上をいくケース」

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カンニング竹山
カンニング竹山/1971年、福岡県生まれ。お笑い芸人。本名は竹山隆範(たけやま・たかのり)。2004年にお笑いコンビ「カンニング」として初めて全国放送のお笑い番組に出演。「キレ芸」でブレイクし、その後は役者としても活躍。現在はお笑いやバラエティー番組のほか、全国放送のワイドショーでも週3本のレギュラーを持つ(撮影/小原雄輝)
謝罪会見したチュートリアルの徳井義実さん (c)朝日新聞社

 お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんの個人事務所が、東京国税局から約1億2千万円の申告漏れを指摘された問題で、所属事務所の吉本興業が活動自粛を発表するなど波紋が広がっている。同じお笑い芸人のカンニング竹山さんは「大人なら税金を払わないと逮捕されることぐらいわかるはず」と疑問を投げかける。

【画像】チュート徳井が記者会見で見せた表情

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 徳井君のケースは、記者会見の様子と、何年も申告すらしていなかったということから考えても、芸能人が嘘をついていましたというこれまでのパターンとはちょっと違うんじゃないかと感じるんですよね。もし、一部だけ申告していたなら「脱税じゃねーか!」ってことになるんだけど、本人は税金のこともわかっていないようだったし、そこまで緻密に金儲けしてやろうという考えでやったとも思えない。あれがもし、すべて計算ずくだったら相当の悪党なんだけど、「え?」と思うことがいっぱいあって、想定される範囲のかなり上をいっているというか……。

 もちろん、何年も申告していなかったといういい加減さと、知識のなさは問題だったと思う。メディアでは個人事務所「チューリップ」の法人税などの申告がされていなかったことが追徴税額1億円以上と騒がれていましたけど、もう一つ、そこからもらった役員報酬の所得税の申告も必要なんですよね。今後、額はもっと大きくなるのかなと思う。

 社会保険に入っていなかったということも、芸人という仕事の性質上、売れない時代に健康保険とか年金を払っていないというケースはよくあります。若手の中には、親に言われて年金だけはバイト代からちゃんと払っているという人も結構いますが、多くは単純に金がなくて払えないわけです。事務所に所属していたとしても、会社員という契約ではないし。直接的に法を犯しているわけじゃありませんが、病院に行ったときに自己負担が増えたり、将来、年金をもらえないということはあります。

 僕の若いころは、運転免許証を持っていなかったので、保険証を身分証明書にするため国民健康保険だけは毎月払っていました。収入が低かったので一番安い額で。年金は払えていなかったので、30代になりこの仕事で食えるようになってから、ちゃんとしないといけないなと思って、窓口で「できる限りさかのぼって払いたい」と言って納付しました。そのとき「竹山さん、良かったですね。もう少し後だったら納付期間が足りなくて、年金もらえませんでしたよ。今から払うのは全然悪いことではありませんよ」と言われたのを覚えています。

 若手のときにどっちも払えていなかった人は、その後、どうしているんだろう。生活ができるようになったらちゃんと払っているんだろうか。

 さらに言うと、芸能で食えるようになった人が節税のために個人会社を立ち上げるのも一般的な方法です。所属事務所と個人だけだと、所得税をたくさん払うことになるから、税率の低い法人税に切り替えたいとみんな考えるわけです。それは一般的な企業が儲け過ぎちゃったときに別会社をつくるのと同じことで、悪いことじゃない。人によっては家族を社員にすることもあるし、別に人を雇うこともある。けど、税金対策の会社も名ばかりじゃなく、ちゃんと勉強して運営していかないといけないんですよね。

 僕は30代で個人会社を立ち上げて、かみさんを社長にして経理の仕事をしてもらっています。我々は個人会社のほうの社員だから厚生年金が発生しますし、税理士や弁護士などのスタッフを雇う必要もあります。

 個人会社をつくらずに、所属事務所とタレント個人という関係なら、お金のことは所属事務所の経理に相談できるんですよ。でも、個人会社をつくっちゃうとお金が所属事務所から個人会社へ振り込まれるだけで、「税務的なことはそちらでやってください」ということになる。個人だと納税のときだけ一時的に税理士を雇うということもありますが、会社だとそうはいかないので年間契約です。僕の場合は、何にお金を使ったのかをかみさんがすべてデータにして、税理士と話し合って帳簿にしてくれています。3年に1回ぐらいは税務署の調査が入りますが、うちの会社はかみさんと税理士が結構きちっとやってくれていたのもあって、今年は優良申告法人として表彰を受けました。

 そういうことが自分でできない人、ルールがわからない人は金を使ってでもスタッフを雇わなきゃいけないんですよね。つまり、税金対策だとしても、会社をつくるとスタッフの人件費などで出ていく金も増えるということです。

 徳井君のケースはとてもまれな案件だったと思う。大人なら税金を払わなきゃいけない、ほったらかしたら逮捕されるんだってことぐらいわかるはずなんだけど、それができなかった。彼が諸手を挙げて降参しているから、逮捕はされなかったんだと思うけど、逮捕されてもおかしくない案件だったはずです。

 数字に弱いとか、約束を守れないとか、異常にこの能力が欠けているということって、人それぞれあると思います。他の人は簡単にできることが、その人にとってはかなり難しいとか。それで悩んでいる人は多いですよね。そうだとしても税金の問題がチャラになるわけじゃないんだけど、苦手なことを自分でわかっていれば、そこにスタッフを入れたり、金を払って誰かに任せたりすればいいだけで、何の支障も出ないと思うんです。

 特に芸能の仕事をしている人の中には、お金に疎い人って結構多い。一般の方たちの感覚では「月にいくら引き落とされるかもわからないなんて、どれだけ傲慢に暮らしているの?」って思われるかもしれませんが、誰かがきちんとやってくれないと電気代がいくらなのかとか、わからない人が多いんですよね。

 徳井君の場合は、今回の件がそれを冷静に見つめ直すきっかけになれば、今後のためになるんじゃないかな。あれだけの才能があるんだから、仕事も社会生活も問題なく続けられると思うんです。

 活動自粛は仕方がない。でも、世の中にはいろんな人がいるし、それぞれ苦手分野があったりもするわけだから、叩くだけじゃなくて、なぜそうなったのかを考えてみることも必要なのかなと思います。ネットでは擁護か批判かという二択になっていて、芸人仲間だから擁護するわけじゃないんだけど、徳井君の今後の長い人生を考えたときに、ちょっと冷静になってみてもいいのかなと思います。

 まあ、身近に見ている人がいたらいいんだけど。一番は税理士資格を持った人と結婚してくれたら「もう安心だな!」って笑いますけどね。税理士を嫁に! それを勧めます。