前橋地方裁判所の判決は、東電はこうした巨大津波が来る可能性を、遅くとも02年には計算できたし、08年には実際、高さ15.7メートルの津波が来る可能性を試算により予見していたと、まず指摘した。
そのうえで、こうした津波への対策をとれば事故は発生しなかったのに、東電は「暫定的な対策さえ行わなかった」と述べた。そして、「経済的合理性(会社の利益をあげること)を安全性より優先させた」などと、東電を厳しく批判した。
国に対しても、巨大津波の可能性を予見できたのだから、東電に事故を防ぐ対策をとるよう命令を出すべきだったなどと指摘し、その責任を認めた。
今回の判決は、原発事故で避難している多くの福島県民に力を与えた。避難者が国と東電に損害賠償を求めている同様の裁判は、全国で約30あり、あわせて約1万2千人の避難者が参加している。
今回の判決は、ほかの裁判の成り行きにも影響しそうだ。(解説/朝日新聞編集委員・上田俊英)
【メモ:福島県の避難者】
最大で16万人を超え、いまも7万人以上が避難を続ける。政府が設けた「避難指示区域」からの避難者と比べ、それ以外の区域からの「自主避難者」は東電からの慰謝料や生活支援が極めて手薄で、福島県民を「分断」に追い込む要因になっている。
※月刊ジュニアエラ 2017年6月号より
ジュニアエラ 2017年 06 月号 [雑誌]
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