高濱 それは意外ですねえ。

岡田 運動会でもいつもビリかブービーだから親に来てほしくなくてね。でも親はやっぱり来る。で、はだしで走る私の姿を見て、母は「あなたはちゃんと土ふまずがある」って言ってました。きっとそれくらいしかほめるところがなかったんでしょう(笑)。

高濱 いいお母さんじゃないですか。

岡田 母は科学の力を信じていました。「神様も、神様に近づこうとする人間の力も信じてる。その力が科学だと思う」と言っていて、科学雑誌の「ニュートン」を創刊からずっと購読していたんです。だから私も小学校低学年からなんとなく読んでいました。だからかな、算数は好きだったし面白かった。近所で開催されたポートピア博にはしょっちゅう通ったし、小6のときは、つくばエキスポにも連れていってくれました。あれは面白かったなあ。

高濱 それってとても大切なんですよ。僕は、子どもは本場や現場に連れていけっていつも言っているんです。魂が揺さぶられるためには本物を見せないと。

岡田 確かにそうですね。私の一番大きな本場体験は、NASAで開催されたスペースキャンプに高1の夏に参加できたことです。それも「ニュートン」の告知で知ったという(笑)。

高濱 高校になっても購読し続けてくれていたお母さんに感謝ですね(笑)。

岡田 当時のNASAに、日本人初の宇宙飛行士だった毛利衛さんがいたんです。そのとき「岡田光信君 宇宙は君たちの活躍するところ」という手書きのメッセージをもらいました。今も大切に持っていますよ。

高濱 それはすごい宝物ですね!

(取材・文=篠原麻子)

※「AERA with Kids 2020年冬号」では、さらに岡田さんが「夢をかなえるコツ」や子どもたちへのアドバイスを語っています。

◎岡田光信(おかだ みつのぶ)さん
アストロスケール創業者CEO。1973年神戸市生まれ。東京大学農学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。米国バデュー大学クラナートMBAを終了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その後、10年間ほど金融やIT業界に携わる。2013年、40歳のときにアストロスケールを創業。Forbes JAPANが選ぶ「日本の起業家ランキング2019」第1位に。

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2020年 冬号 [雑誌]

高濱正伸,宝槻泰伸,安浪京子

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AERA編集部
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