日本の「46%減」も、これまでの「26%減」という目標に比べれば相当高い。新しいエネルギー基本計画は、今夏までに決まる予定だが、現在は22~24%としている30年度の電源構成での再生可能エネルギー(再エネ)の目標を大幅に増やし、26%としているCO2を多く排出する石炭火力発電を大幅に減らさなければ、達成が難しいのは間違いない。

 30年までに残された時間は少ない。洋上風力発電のように建設に時間がかかる再エネや、CO2の回収といったイノベーション(技術革新)には、多くを期待できない。まずは、屋根置きの太陽光発電や陸上風力といった、時間をかけずに導入しやすい再エネの拡大と、建物の断熱などの省エネの徹底という、今できることに全力を挙げる必要がある。

 気象災害や食料生産の減少など温暖化の影響は、人々の生命や健康、生活を脅かす。だが、温暖化対策に取り組めば、新たなビジネスも生まれる。世界の企業や金融機関は、50年に「年190兆円」といわれる経済効果を狙って動いている。対策の遅れは、日本経済にとっても打撃になる。

【パリ協定】
2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択され、16年に発効した。世界の平均気温は、産業革命前からすでに約1度上昇しており、このペースだと温暖化は歯止めがかからなくなるおそれも。今年11月にイギリスで開かれるCOP26で決まる30年の削減目標は、温暖化による危機を避けるために決定的に重要とされている。

(朝日新聞編集委員・石井徹)

※月刊ジュニアエラ 2021年7月号より

ジュニアエラ 2021年 07 月号 [雑誌]

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石井徹
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