今、世界では脱炭素社会の実現が急がれている。脱炭素社会とは、温室効果ガスである二酸化炭素を排出しない社会のこと。現在、二酸化炭素が増えすぎた地球は温暖化が進行し、異常気象や自然災害が多発している。50年後の地球を守れるか――。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」10月号では、地球環境問題をテーマに「2050年の地球のために」を特集。地球温暖化防止のためにどうしたらいいかを考えた。

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 人が火を使い始めたのは数百万~数十万年前。このときの燃料は木や草だった。火で食べ物を調理し、暖をとり、獣から身を守ることで、人類は繁栄してきた。

 現在のエネルギーの主流である石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を本格的に使い始めたのは、18世紀半ばにヨーロッパで始まった産業革命からだ。

 化石燃料は、植物などが数百万~数億年間に高圧や高温を受けて変化したという説が有力だ。これらは炭素からできているので、エネルギーを得るために燃やすと、空気中の酸素と結合して二酸化炭素(CO2)などが発生する。

 ノーベル化学賞を受賞したスウェーデンの科学者アレニウスは1896年、空気中のCO2濃度が上がると気温が上昇する「温室効果」を発見。その後、世界は化石燃料を大量に消費するようになり、空気中のCO2濃度は急上昇した。

 地球の平均気温は約15度。人などの生き物が暮らしやすい温度だ。これは二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、太陽で暖まった地表の熱を逃がさないようにくるんでいるから。ダウンジャケットを着ているような感じだ。温室効果ガスがないと地表は零下約19度になるといわれる。CO2は温室効果ガスの7割以上を占める。

 平均気温の上昇は、人類が排出した温室効果ガスの積み上げによって決まる。産業革命前の大気中のCO2濃度は、約280ppm(0.028%)だったが、現在はほぼ5割増の約410ppm(0.041%)になっている。真夏のダウンがつらいように、暑すぎるのも困る。

 世界の科学者でつくる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、産業革命以降、世界の平均気温は約1度上昇し、猛暑や豪雨が増加。海面水位は上がり、雪や氷の量は減少していると指摘する。このままだと気温上昇は早ければ2030年には1.5度に達し、影響はさらに深刻になるだろうと警告している。現実は科学の予測どおりか、予測よりも悪い状況になっている。

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石井徹
石井徹
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