世界共通の課題である地球温暖化問題。その研究の第一人者である、真鍋淑郎さんにノーベル物理学賞が贈られ、12月10日に授賞式が行われる。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」12月号では、受賞の意味や、真鍋さんの言葉を紹介した。

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 今年のノーベル物理学賞は米プリンストン大学上級研究員の気象学者、真鍋淑郎さんら3人に決まった。

 真鍋さんの受賞理由は、地球の気候をコンピューター上に再現する方法を開発し、エネルギーの使用で排出される二酸化炭素(CO2)が大気中に増えると、地球温暖化が起きるしくみを数値で明らかにしたこと。いまから50年以上も前だ。さらに大気中の現象だけではなく、海流や海水温といった海の現象が気候に与える影響も考えて「大気・海洋結合モデル」と呼ばれる計算方法を開発した。現在、深刻さを増している地球温暖化を予測する研究分野を、いち早く切り開いてきた。

 これまで「地球科学にはノーベル賞が出ない」といわれてきた。天文学と数学、地球科学などには、クラフォード賞が与えられ、ノーベル賞が扱わない科学領域を補完するとされたからだ。選考も、ノーベル物理学賞と同じスウェーデン王立科学アカデミーが担当している。真鍋さんも2018年に受賞している。このため、今回のノーベル賞受賞は、「地球科学が認められた」と喜ぶ研究者も多い。

 1931年に愛媛県の医者の家に生まれた真鍋さんは、地球科学の道に進んだ。58年に東京大学大学院を修了して博士号を取得。同じ年に渡米してアメリカ気象局(当時)研究員となった。東大の研究室で席を並べ、その後も同じ分野で研究を続けてきた海洋研究開発機構の松野太郎フェロー(気象学)は「物理学の研究者には温暖化を否定する人がいたのも事実だ。温暖化の影響が深刻化するなか、物理学として温暖化の事実を公式に受け入れ、そういう人たちに反省を促す意義もあったのではないか」と語る。

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石井徹
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