「恐竜を研究するうえで、鳥との関係はとても重要なカギを握る」という恐竜くん。いったい、なぜだろう?

「鳥は恐竜から進化したのではないか」という考え方は、今から160年以上前からあった。しかし1930年代以降、世界的な大恐慌や戦争の影響などもあり、恐竜研究は次第に衰退。また、そのころには「恐竜と鳥が似ているのはただの偶然」という考えが主流になっていった。これによって多くの人が恐竜研究に限界を感じ、研究から離れていった。

「鳥=恐竜」説が復活したのは、鳥に近い獣脚類の化石が発見された1969年。その後、若い学者を中心に新しい研究技術が模索されるなかで、96年、ついに全身が羽毛で覆われた恐竜化石「シノサウロプテリクス」が発見された。

 羽毛とは、私たち哺乳類の体毛とは違い、鳥だけが持つ、とても複雑で特殊なもの。すべての鳥が例外なく羽毛を持っていることから、「羽毛がある生き物=鳥」と定義されてきた。それが、羽毛恐竜の発見によって、羽毛は鳥と恐竜だけが共通して持つ特有の構造となり、「鳥=恐竜」説の動かぬ証拠となった。

 鳥と恐竜の生態は100%同じではないが、目の前に子孫としての「生きたサンプル」がいることによって、恐竜の見方や研究の手法はガラリと変わった。

 今では鳥の体の構造や生態、遺伝子の解析などを基準にして、恐竜の進化や生態を解明することができるようになった。それによって恐竜の色、病気や成長の過程など、化石からでは絶対にわからないといわれてきたことが、今、急速なペースで解き明かされるようになってきた。

※月刊ジュニアエラ 2021年8月号より

ジュニアエラ 2021年 08 月号 [雑誌]

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AERA編集部
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