サピックス教育情報センター本部長の広野雅明さんはこう話す。

「ここ2年間はどの学校も行事の一般公開を中止したり、説明会も人数を絞って行ったりしたために、学校見学が思うようにできませんでした。各校オンラインで説明会を行っていたのですが、実際に訪れるのとは、やはり受験生のモチベーションが違います。苦労をしてでもこの学校に入りたいという意欲を保つのが難しかったのではないでしょうか」

 ただし難関校の志願者が減少したのはチャレンジ層が抜けたためで、難易度には大きく影響していないという。

 今年の入試のもう一つの特徴は、ほとんどの学校で、1回目の入試の志願者が増加したことだ。

「コロナ禍の影響で、受けられるときに受けておこうと、早めに行動した受験生が多かったようです」(安田さん)

 男子の厳しさは続いており、安田教育研究所の調べによると、2万2500人の募集枠に対して約2万6500人が受験し、4000人近い男子受験生がはじき出される計算になる。安田さんは「募集枠よりも多めに合格を出す学校が多いので必ずしも数字通りではないが、相変わらず男子には厳しい受験が続いている」と話している。

 最近は、手取り足取り面倒を見て学習させる学校よりも、生徒の学びのモチベーションを大切にして自主性を尊重する学校のほうが人気だという。さらに北さんは「グローバルやICTなど、21世紀型の教育を標ぼうする学校は相変わらず人気が高いです」と言う。広尾学園(東京都港区)、三田国際学園(東京都世田谷区)、開智日本橋学園(東京都中央区)などが安定して志願者を集めている。

■埼玉県の学校が躍進

 難関校では、男子御三家の武蔵(東京都練馬区)、女子御三家の女子学院(東京都千代田区)、共学校では渋谷教育学園渋谷(東京都渋谷区)が増加した。昨年開校し初年度から志願者が殺到した広尾学園小石川(東京都文京区)は今年、昨年以上の志願者を集めた。

 付属校も安全志向で、早稲田大や慶應義塾大、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)の付属校よりも、日本大、東洋大、東海大系の付属校が伸長した。

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