――確かに、公園などで遊ぶ子の姿は少なくなりました。
それから、大人が、常に子どもたちを見ているでしょう? 最近はいろいろな事件があるし、「見守っている」と言えますが、少しかわいそうだな、と感じますね。
僕らが子どもの時は、秘密基地を作ってよく遊びましたが、これはもう本当に「秘密」のものだった。だからこそワクワクして楽しかったんです。棒を振り回して遊んだり、ちょっと危ないこともしてね。みんなであれこれ考えて、そうやって加減を学んでいった。
でも今は、必ず大人の目があるでしょう。時には大人が一緒に秘密基地を作ってくれたりする。それは……、”秘密”基地と言えるのか? ちょっとかわいそうです。口は悪いけど、「ほっといたれや……」と思ってしまいますね(苦笑)。
子ども向けの本を書くときに、大切にしていること
――作品の中であるように、中学生たちが悩みを持ち、人生をやり直したいと願う気持ちは、わかる気がします。
そうですね。誰でも、それぞれ、悩みを持っています。でも、ひとつ間違えないでわかって欲しいのは、「やっぱり人生のリセットなんてできない」ということ。「リセットルーム」の中の登場人物も同じで、それぞれの子どもが抱える悩みに対して、リセットルームで問題を解決できるような環境を与えたとしても、変化を受け入れるかどうかは、それぞれのキャラクター次第なんです。
最後まで残って受け入れるキャラもいれば、リセットなんていらないと思って消えるキャラもいる。それぞれの登場人物が、どういう道を選ぶかは、最初、作者である僕にもわからないのです。でもだんだん、「この子はきっと救われる」、「この子は別の道に行くだろう」、とわかってくるんですね。
――中学生の気持ちを細かく丁寧に考えて、物語を固めていくのですね。
子ども向けの本を書くときは、相当な覚悟を持って書いています。下手なことを書いて、読者の気持ちを傷つけることはあってはいけないし、もっと言えば、本を読んで、子どもたちが何かに思い詰めたり、ましてや命を粗末にしたりするようなことは絶対にあってはならない。少しでもそうした感覚を与えることがないよう、細心の注意を払っています。
そして、あくまで小説はフィクションなのだ、ということをわかって読んでもらえたら、と思いますね。
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