『名探偵夢水清志郎』シリーズなどを手がける人気児童文学・ミステリー作家のはやみねかおるさん。6月に発売された最新作『リセットルーム』(朝日新聞出版)は、中学生たちがSNS上の仮設空間「ルーム」の中で、アバターを使って物語の世界に入り込む学園ミステリーです。「もし、あなたの人生がリセットできるとしたら、何をリセットしますか?」――そんな問いを投げかけた今作について、はやみね先生にお話を伺いました。※後編<「あのときをもう一度やり直せたら…」これまでの人生で“リセット”したい瞬間を、大人と子どもに聞いてみた>に続く

MENU もし、乱歩が生きていたらどんなミステリーを書いた? 「リセットしたい気持ち」は誰にでもある 今と昔の小学生、変わったところと変わっていないところは? 子ども向けの本を書くときに、大切にしていること 人生は「リセットできない」けれど…

もし、乱歩が生きていたらどんなミステリーを書いた?

――これまで、はやみね先生は「夏休みルーム」「奇譚ルーム」、そして最新刊の「リセットルーム」と、中学生の“ぼく”を主人公にした、SNSの仮想空間でのミステリーを書いていらっしゃいます。SNSを舞台にしたミステリーを書こうと思われたきっかけは、どのようなものでしたか?

 まさか自分がSNSの世界を小説にするなんて思ってもいませんでしたよ。実は、僕はSNSどころか、インターネットやスマートフォンを使いこなすことができないくらい、テクノロジーの世界が苦手。「スマホに電話がかかってきたら、緑ボタンを押せばいいんだっけ?」と言うレベルなんです(苦笑)。


――そうだったのですね。でも、ネット社会に詳しくないという先生が、あのSNSの仮想現実を駆使した小説を描かれているなんて、驚きます。

 最初から仮想現実を描こうとしたわけではなく、担当の編集者さんに「江戸川乱歩風の子ども向けミステリー小説を書いてみませんか?」と依頼をいただいたのが始まりでした。

 そのとき、「もし現代に乱歩が生きていたら、子どもたちを相手に、どんなトリックや世界観で驚かせただろう?」と考えてみたのです。すると、「きっと乱歩なら、今の子達が夢中になっているSNSやネットを題材にしただろうな」、と思えたんですね。その上で、子どもたちに「SNSの怖さ」も見せるんじゃないか……そんなふうに考えて、ストーリーを練っていきました。そうして、ネットが苦手な僕がなんとか描いたのが、この「ルームシリーズ」です。

「リセットしたい気持ち」は誰にでもある

――今回の作品『リセットルーム』では、複数人の中学生が、自分の中にあるモヤモヤした気持ちをSNSの仮想空間内でリセットしようと試みる物語が描かれます。今のリアルな小中学生も、特にSNSなどで「ブロック」をしたり友達をやめたりして、人間関係を「リセット」してしまう傾向があるようですが、こうした今の子どもたちの感覚はどこからきていると思われますか?

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玉居子泰子
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