親が無意識のうちに見て見ぬふりをしていることが、わが子を「何も言えない傍観者」にしてしまう可能性があります。

 子どものSOSは1回限りかもしれない

――では、もしわが子に「いじめられている」と言われた場合、親はどのような対応をすればいいのでしょう。

 まずは、子どもの話をちゃんと聞いてください。ここで大事なのは、過大な反応も過小な反応もしないことです。加害者や学校を過剰に非難したり、「そのくらい大したことない、大丈夫だよ」と過小評価したりするのは絶対にやめてください。

 そして、子どもの話を冷静に最後まで聞きましょう。子どもの話はあちこちに飛んだり、事実と感情が混じってしまうこともあるでしょう。

 だからこそ、親は「事実はこれだな」「これは子どもが思いこんでいることだ」と慎重に見分けながら話を聞くこと必要です。

 客観的事実を確認することも大切ですが、傷ついた子どもの心の事実をしっかり聞くことも大切です。そのつらさを受け止めて「よく話してくれたね。ありがとう」と伝えましょう。

 まちがっても「あなたも悪い」などとは言ってはいけません。

――「事実」として、どんなことを聞けばいいのでしょう。

 いつ、どこで、誰が、どのような行動をしたのか。その頻度、子ども自身の気持ち、そして誰が見ていたのか、です。

 これらをきちんと聞き、メモしておくことも大切です。ネットでのいじめがあった場合には、その画面をスクリーンショットしておきましょう。

 ――学校には伝えたほうがいいでしょうか。

 もちろんです。「いじめ防止対策推進法」では、いじめの情報は学校が集約することになっていますから、事実を伝え、学校に対応を依頼します。もし学校が動かなければ、教育委員会にも窓口がありますからそちらに連絡しましょう。

 親の仕事は、わが子を守ることです。そのためには、子どもの1回目のSOSにきちんと向き合うことが重要です。そのとき軽くあしらわれると、二度目の相談はないかもしれません。誰にも打ち明けず、死を選ぶ子どもがいることを忘れてはいけません。

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