最近は6月から猛暑となる日もあり、水難事故のニュースもあとを絶ちません。警察庁の発表によると、昨年発生した水の事故は全国で1500件余り、過去10年で最も多かったといいます。このうち約1割が中学生以下の子どもの事故でした。なぜ水難事故が減らないのか、保護者ができる対策は? 一般社団法人 水難学会理事の斎藤秀俊さんに話を聞きました。

MENU 「プール」が水難事故を減らしている 年齢によって注意点は異なる 川の流れが緩やかになっているところは油断できない もしもの時は「浮いて待て」

「プール」が水難事故を減らしている

――子どもの水難事故が増えています。

 2024年での中学生以下の水難事故の発生件数は前年と比べると増加していますが、死者・行方不明者数は28人と、数十年前と比べると大幅に減っています。1979年(昭和54年)では、水の事故による子どもの死者・行方不明者数は1022人でした。それが、2020年ぐらいには約20~30人程度になっています。

 実は、子どもの水難事故での死亡者数をここまで減らした立役者は、学校などの「プール」なんです。

――プールの授業のことでしょうか?

 いいえ。「プール開放」です。例えば暑い夏、午前中にプールでたくさん泳いだら、午後は疲れて川や海に行って泳ごうという気にはならないでしょう。昨今は、教員の働き方改革や猛暑の影響などで夏休みのプール開放も難しくなっているようですが、子どもたちが気軽に通えるプールがあることが水難事故の減少にはとても役立っていたのです。

 最近は「プール開き」前の6月から真夏日、猛暑日が続くことがあり、今年はすでに川で水遊びをしていた中学生が亡くなってしまう事故もありました。こういったことから、今後も学校のプール開放が減っていくと、夏休みなどに涼を求めて川や海に行った子どもの事故が増える可能性も考えられます。

年齢によって注意点は異なる

――子どもの場合、どのような水難事故が多いのでしょうか。

 年齢ごとに異なります。

 2歳ぐらいから小学校就学前ぐらいまでの子どもの場合、1人で家をフラっと出て、川や用水路に落ちてしまう。家の中にいたはずなのに、保護者の知らぬ間に外に出てしまっていたというケースもあります。小さな子どもは靴がなくても外に出ていきます。普段から、鍵をしっかりかけるなど対策をしておかなければなりません。

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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