なぜ、日本では理科系の大学に進む女子が少ないのか、という問題もたびたび議論されていることの一つです。親の世代は「男子は数学や物理に強く、女子は苦手としやすい」というステレオタイプから完全に抜け出せてはいません。結果的に、その子どもたちも進学先を選んだり、職業を選択したりするときに「これが男性的」「女性的」という考えが無意識に働いてしまう。

共学校の女子生徒は自己効力感が低下しやすい?

――上田先生は、長く東工大(現:科学大)で副学長を務められてきました。女子学生たちの出身校に、なにか傾向は見られましたか。

 東工大(現:科学大)のような理系の単科大学に入学してくる女子学生は、女子校の出身者が多い印象がありますね。共学の高校で文系・理系クラスにわけると、男子が理系クラスを占める割合が多くなり、彼らが力を発揮する場面が多くなる。結果的に、理系の女子はマイノリティーであると意識せざるを得なくなります。一方、女子校で理系・文系クラスにわけると、純粋に数学や物理が好きな気持ちがそのまま育まれていくのかもしれません。

 共学校で男子と女子を比較すると、とくに高校では、女子のほうが自分ならできるという「自己効力感」が低下しやすい、といった話も聞きます。小学校の高学年までは女子のほうが心身ともに成長スピードが速く、積極的にリーダーシップを取っていても、高校生くらいになると、数学や物理のような「論理的」科目は男子のほうが優れているという「文化的バイアス」も顕著になっていきます。

 実は男子と女子の成績には違いがないのですが、女子の自己効力感が下がっていくことによって、たとえば理科系の研究者のように、いつ成果が出るかわからないうえ、自己効力感が特に必要とされる研究分野には女子は進まず、比較的女性の多い職種を選択する傾向にある、とも言われています。

 そう考えると、男子と肩を並べる共学よりも、女子校に進んでおいたほうが自己効力感を下げにくいと言えるのかもしれません。ただし、そもそも女子の自己効力感が下がってしまいがちだという、日本の文化的問題をどうにかしなければいけない、というのがまずは大事な問題だと思います。

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