受験にあたって子どもの進学先は共学がいいのか、男女別学がいいのか。埼玉県立高校の共学化推進に対する賛否も話題になりました。「共学でさまざまな価値観にふれたほうがいい」「男女別学のほうが異性の目を気にせずに学びに集中できる」などさまざまな声があるなか、男女別学、共学についてどうとらえたらいいのか、文化人類学者で東京工業大学(現:東京科学大学)特命教授の上田紀行先生に聞きました。

MENU 共学と別学で異なるジェンダーロール(性役割) 共学校の女子生徒は自己効力感が低下しやすい? 20年、30年後も男女別学は残る?

共学と別学で異なるジェンダーロール(性役割)

――昨年、埼玉県の公立高校では共学化を推進する動きが起きました。私立中高一貫校でも事情は異なりますが、やはり共学化が進んでいる印象があります。そのなかで、男女別学で学ぶことについて、率直にどう思われますか?

 前提として、僕は社会にバラエティーを増やしていくことのほうが大事だと思うので、「男子校」「女子校」「共学校」という選択肢があるのはいいことだと思います。いずれにせよ、すべての子どもにとって“最適な場”というのは見いだしにくい。女の子だろうが、男の子だろうが、一人ひとりみな個性はあるわけですし、性的マイノリティーの人もいるわけですから、選択肢自体が多いのはいいことだと思います。

――「共学こそ、男女別学よりもバラエティーに富んでいる」という考えで進学先を選ぶケースも少なくありません。そのあたりはどうお考えですか。

 たしかに、その傾向はあるかもしれませんね。もう少し細かい話をすると、「ジェンダーロール」という問題もあります。

 たとえば、共学の高校に進むと、女子生徒が生徒会長になりにくい傾向があると言われています。「女の子は男の子を支えるべきだ」と考える人がいまどれくらいいるかはわかりませんが、そうした旧世代的な考えが完全になくなっているわけではありません。また、女子校に進んだ生徒のなかには、「もし自分が共学校に進んでいたら、学校でこんなにリーダーシップを取ることはできなかった」と考える人は少なくないようです。

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上田紀行
上田紀行

東海学園大学特命副学長。東京工業大学(現:東京科学大学)特命教授。文化人類学者。医学博士。1958年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。東工大内では、学生による授業評価が全学1200人の教員中1位となり、2004年に「東工大教育賞・最優秀賞」(ベスト・ティーチャー・アワード)を学長から授与された。東工大教授、リベラルアーツ研究教育院長、副学長を務めた。『生きる意味』(岩波新書)、『かけがえのない人間』(講談社現代新書)、『愛する意味』(光文社新書)など著書多数。

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