――自己効力感が下がらないようにするためには、具体的にどうすればいいのでしょうか。
社会に近づく年齢になればなるほど、「女性の政治家がこんなにも少ない」「ジェンダー・ギャップ指数で日本はこんなにも低いのか」といった現実が見えてきます。10代という、自分を成形していく大切な時期に、ジェンダー・ギャップの問題がかぶさってくる。
欧州の一部の国のように、ジェンダーバイアスの少ない社会では、「共学校のほうがバラエティーに富んでいる」と言えるのかもしれませんが、日本のいまの現況においては、中高では女子校に通っているほうが自己効力感を下げずにいられる可能性はありますね。
女性の政治家や社長の割合が増えたりして、“見える社会”のありさまが変わっていけば、ジェンダーバイアスによる自己効力感の低下も防ぐことができるかもしれないので、そこも重要なポイントだと思います。
20年、30年後も男女別学は残る?
――一方で、男子校に進むメリットはどこにあると思われますか。
僕自身、男子校に進みましたが、異性からの評価で自分を見るという自我形成はしてこなかった。決してイケメンではなかったこともあり(笑)、ジェンダーを鏡としながら自分を確立することがなかったので、だからこそ自分らしく楽しく生きていられたのではないか、と思うこともあります。
もちろん、メリットばかりではありません。学生たちを実際に教えていても感じることですが、男子校出身者のなかには女の子とアイコンタクトができない生徒もいますし、「自分とは立場の異なる他者の気持ちを考えてみる」「相手に寄り添ってみる」という概念自体を深く理解できないまま成長している学生も少なくないと感じます。寄り添いの心が足りないのは、同質性の高い世界で生きてきたからなのかな、と感じることはありますね。
ただ、システムを構築したり、専門性の高い技術を身につけるべくひたすら鍛錬を積んだりする人も必要です。これは男子校出身者が得意とすることかもしれませんね。ぼくも含めて、恋愛とかケアとかは若い頃は苦手かもしれないけど、そうした「バラエティー」があるからこそ、人間も社会も面白いのだと思います。
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