――20年、30年後も男女別学という選択肢は残ると思いますか?

 まず、実感として開成や桜蔭といった男女別学の私学の難関校が共学化するイメージは持ちにくいですね。そうした私立の中高一貫校はこのまま残り続けるのではないか、という気がしています。ただ、たとえば北関東の高校のように、かつての名残で男女別学が存在している公立校に関しては、今後変わっていく可能性はあると思います。

 以前、北関東にある県内トップの女子校で講演したことがありますが、そのときは生徒たちがあまりにも優秀なことに驚いた記憶があります。同時に感じたのは、大学に入り、「異性によく見られたい」という感情が芽生えたときに、その能力やパワーを持ち続けていられるかどうか、ということ。「女子校を自ら選択した」ではなくて、そもそもトップクラスの公立高校が別学だったというのはかなり違います。そこはこれから注目されるところですね。

 大切なのは、他人にどう思われようが「私は私で素晴らしいんだ」という思いをどこまで強く持ち続けられるか、だと思います。共学のほうがいいとか、別学のほうがいいとか、そんな制度上のことよりも、どんな共学なのか、どんな別学なのか、その地域での文化的背景や、その学校の目指すポリシーのあり方が問われていると思います。そして生徒自身はもちろんのこと、親としても自分がこの人生で何を目指して生きているのかが、どの学校で学ぶべきなのかの選択の核心になってきていると思います。

(取材・文/古谷ゆう子)

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上田紀行
上田紀行

東海学園大学特命副学長。東京工業大学(現:東京科学大学)特命教授。文化人類学者。医学博士。1958年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。東工大内では、学生による授業評価が全学1200人の教員中1位となり、2004年に「東工大教育賞・最優秀賞」(ベスト・ティーチャー・アワード)を学長から授与された。東工大教授、リベラルアーツ研究教育院長、副学長を務めた。『生きる意味』(岩波新書)、『かけがえのない人間』(講談社現代新書)、『愛する意味』(光文社新書)など著書多数。

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