企業と働く側の「対話」がより大事な時代に

――事業者側がこの制度変更に気づいていない場合はどうしたらよいでしょう?
 「育児・介護休業法」のポイント①、②は義務なので、事業者側からの個別周知がない、もしくは事業者側が対象者だと気づいていないような場合は、「私は対象者だと思うのですが、どうなんでしょう?」などと、事業者側にやんわりと問い合わせてみるのがよいでしょう。 
 もし、事業者側が動いてくれない場合は、お住まいの地区の労働局均等室に問い合わせることもできます。均等室は、事業者側、従業員側からの相談を受け付けています。

――小学校入学前に時短勤務にすると、学童の選考で不利になることは?
 学童の利用申請に添付する終業証明書には時短勤務について記載する欄があるため、選考に関わる可能性はあります。ただ、空き状況や選考要件など市区町村により事情が異なると思いますので、時短勤務にすることで不利になるかどうか、市区町村の担当課に問い合わせるのがよいでしょう。

――子の看護等休暇などを事業者側が認めなかった場合のペナルティは?
 育児介護休業法の施行に関して、行政側から事業主に対して報告を求めたり、助言、指導、勧告などが行なわれたりすることがありますが、罰則を伴うものではありません。また、規定に違反している事業主が勧告に従わなかったときはその旨を公表される可能性もあります。実態としては法的なこと以上に、社員の離職、採用難など、社会的な圧力の方が影響は大きいと思います。

――このような制度改正、今後の課題は?

 数年おきに「育児・介護休業法」の改正が進んでいますが、中小企業を中心に、まだまだ改正対応が追いついていない事業者が見受けられます。
 近年、人手不足が深刻です。以前は、育休を取ることを上司に伝えると、パートタイマーになることを打診されるようなこともありました。しかし今は、辞められたら代わりの人を採ることに困るため、従業員1人ひとりに丁寧にフォローするようになってきています。
 子どもを看護する環境がよくなっている一方で、子どものいない従業員へのフォローも大事になってきます。事業者と従業員が今まで以上に対話していくことが大事な時代になっています。

(取材・文/永野原梨香)

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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