3)従業員から申し出があった場合、事業者は断ることができない
子の看護等休暇の取得や残業ナシは義務なので、従業員から申し出のあった場合、事業者は断ることはできません。また事業者側は、対象となる従業員に向けて、個別にこの制度を周知する義務もあります。
子の看護等休暇を有給にするか無給にするか、決めるのは事業者側。就業規則で無給か有給か定めます。個別周知のためには、男女問わず、従業員の家族構成と子どもの年齢を把握する必要があります。人手不足の中、人事担当者の負担が増えるので、頭を悩ませる事業者もあるのではないでしょうか。ですが、個別周知を義務付けたということは「この制度を使っていいんだ」という従業員の認識につながるので、徐々に活用する従業員も増えていくでしょう。
また、これまで従業員数1000人超の事業者に育児休業取得状況の公表義務がありましたが、300人超の事業者に拡大されます。
4)育児期に柔軟な働き方がしやすい環境へ
さらに10月1日以降は、育児期の柔軟な働き方を実現するため、新たな措置が施行されます。事業者側は3歳から小学校就学前の子どもがいる労働者に対して、次の5つの措置から2つ以上を選択し、労働者はそのなかから1つを利用することができます。
・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日以上/月)
・保育施設の設置運営等
・就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇の付与(10日以上/年)
・時短勤務制度
5)「育児時短就業給付」の支給開始も
これは「育児・介護休業法」ではなく、雇用保険の給付の新設です。育児を目的とした時短勤務による収入の低下に対して給付金を支給する制度で「育児時短就業給付」と言います。
時短勤務は法律上、3歳まで取得することができますが、給付金については2歳未満の子を養育する社員が対象です。2歳未満で時短勤務を取得したことにより、賃金が低下するなど一定の要件を満たしたときに、原則として「育児時短勤務中の賃金額×10%」が支給されるようになります。女性も男性も同じく、対象となります。
これは、給料としてではなく雇用保険からの給付金として非課税でもらえるものです。なお、その月に支払われる賃金と給付金の合計が、時短開始前の賃金額を超えることがないように調整されるものになります。

これらの改正や新設の疑問点を、佐藤さんに解説してもらいました。