一方で、就学前の5歳児健診を導入している自治体はわずかに14%と低調です。特に5歳児の健診の実施と拡大には改善の余地があることは注目に値するのです。

発達障害の早期発見と支援の効果

 発達や行動の問題は、多くの子どもたちに見られる課題ですが、特に自閉症スペクトラム障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの発達障害があると、学校での学習面や家庭での日常生活において大きな影響を及ぼす可能性があります。

 これらの障害は、外見からは分かりにくい場合も多く、単に「落ち着きがない」「わがままだ」などと誤解されがちです。

 しかし、子ども自身は自分の特性に戸惑いを感じたり、周囲の要求に十分応えられずに自尊感情を傷つけられたりすることがあります。こうした状況を未然に防ぎ、必要なサポートを得るためには、早期の発見と支援が欠かせません。

 研究によれば、発達障害を持つ子どもが適切な支援を受けることで、社会的スキルが向上し、学習意欲を維持しながらクラスに適応できる可能性が高まることが示されています。

 さらに、日本国内外の調査からは、幼少期に適切な指導や療育を受けた子どもたちが、思春期以降における不登校や情緒面の問題を比較的少なく乗り越えられるケースが増えるという報告もあります​​。

 大分県竹田市で行われた5歳児健診プログラムは、その顕著な成功例として注目に値します。

 このプログラムでは、公共保健看護師や幼稚園教諭による初期のスクリーニング、医師による診断、さらに専門家による継続的な支援が実施され、発達障害と診断された子どもの95%以上が通常学級に通うことができました。

 また、学校を拒否する児童の割合が大幅に減少したことも大きな成果として挙げられています(#3)。

早期支援の社会的意義

 5歳児健診は、単に子どもの発達上の問題を診断するだけにとどまらず、地域社会全体で支援体制を構築する出発点としての役割も担っています。

 例えば、竹田市では、保護者や教育者を対象とした講習会や勉強会を積極的に実施し、子どもの特性や支援の方法について理解を深める取り組みを続けてきました。

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