5歳児健診の今後の展望

 全国で5歳児健診が導入されることで、すべての子どもに公平な機会が与えられ、発達障害や行動上の課題を抱える子どもたちも適切なサポートを得られる社会の実現が期待されます。

 一方で、専門家の人材不足や地域間の支援体制の格差といった課題も指摘されています。

 特に、発達障害や行動面の支援に精通した専門家は限られており、医師・心理士・特別支援教育の教員などの連携が不可欠です。

 また、保護者や地域住民がこれらの課題を正しく理解し、自治体や学校と協力しながら支援策を充実させていくことが求められています。

 さらに、2028年度までに健診の実施率を100%にするという目標を達成するためには、自治体レベルでの周知活動や、保護者向けの啓発プログラムの充実も不可欠です。

 5歳児健診が義務化されることで、行政や教育機関はもちろん、地域の保健センターや子育て支援施設などが一体となって協力体制を強化することが期待されます。

 例えば、幼稚園や保育園と連携したスクリーニングの実施や、必要に応じたフォローアップのシステムを整えることで、より多くの家庭が安心して子どもの成長を見守れるようになります。

 結論として、5歳児健診は発達障害や行動上の問題を早期に発見し、適切な支援を提供するための有効な手段であり、子どもの成長と地域社会の発展に大きく寄与するといえます。

 その成功には、保護者や地域社会全体での積極的な協力が欠かせません。加えて、今後は専門家の育成や地域格差の解消といった課題を解決し、全国どこに住んでいても必要なサポートを受けられる体制を整備することが重要です。

 子どもたちの可能性を最大限に引き出し、幸福感に満ちた社会を構築するためにも、この5歳児健診の普及と質の向上が強く望まれています。

(小児科医、新生児科医・ふらいと先生/今西洋介)

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今西洋介(ふらいと先生)
小児科医・新生児科医 今西洋介(ふらいと先生)

小児科医・新生児科医。日本小児科学会専門医/日本周産期・新生児医学会新生児専門医。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。小児公衆衛生学者。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。Xアカウント(@doctor_nw)は2024年3月現在14万フォロワー。

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