文章を正しく読むためにはある程度の技術と時間が必要なわけですが、一方で「作問者の意図を汲もう」と設問に意識を向けることは、今すぐにでもできることなのかもしれません。「人の話を聞こう」と思うことこそが「問題文を読む」ということですから、文章自体はしっかり読めているけれど、問題文は読み飛ばしてきたという生徒が、設問一つ一つに目を向けることで点数を伸ばしていく、ということは起こりうることだと思います。それが「合格したい」という強い気持ちと重なれば、成績の伸びにつながる可能性だってある。

文章を正しく読み取れるようになることに“近道”はない

茂山 ここは非常に難しい部分で成長段階にある中学受験の弊害かもしれませんね。「他人の書いた文章を正しく読み取れるようにする」ということに近道はない。しかし、受験という期限に間に合わないという焦りから「とにかく解けるようになる」ことに重点を置いてしまい、テクニックのようなものに走る。何をどう身につけても、読めないものは解けないわけで、どれだけ時間が短くても仕切り直して読解を攻略するための坂道を登るのであればしっかり読むことから地道にやっていくしかないのだと思います。

山﨑 ご家庭で国語の勉強に伴走している保護者さんの多くが口になさらないことは、まさにこの「問題文にはなんて書いてある?」ということなんです。多くの方はきっと文章のほうを優先し、「大事なのはこの部分」ということばかりに目を向けてしまう。でも、問題は聞かれたことに真正面から答えなければ完全なすれ違いが起きてしまう。いま一度、「なにを聞かれているのか」という根本に立ち返ってみてほしいと思います。

(聞き手・構成/古谷ゆう子)

「漢字を書けない生徒」が目に見えて増えている、その理由とは? 中学受験の現役講師たちに聞く
著者 開く閉じる
茂山起龍
中学受験塾「應修会」塾長 茂山起龍

しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama

1 2 3